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【書評】

靖国神社が消える日 宮澤佳廣 著

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◆賊軍合祀、変わる本質

[評者]島田裕巳=宗教学者

 著者の宮澤佳廣氏は、約十年間にわたって靖国神社に禰宜(ねぎ)として奉職した人物である。禰宜は宮司、権宮司の下で、靖国神社のナンバー三である。その立場から、靖国神社をめぐる問題はどのようにとらえられるのか。そこには外部からは見えにくい複雑な事柄がからんでいる。

 扱われている事柄は、遊就館の展示方針から首相の公式参拝やA級戦犯の合祀(ごうし)と多様だが、著者が一番問題としているのは、本来国家の施設として誕生し、国家のために亡くなった戦没者を祀(まつ)ってきた靖国神社が、戦後、民間の一宗教法人となったことから生まれた矛盾である。

 戦前の靖国神社は陸軍と海軍によって管轄され、国の方針に沿って運営されてきた。ところが、戦後、宗教法人になったことで、独自に方針を決定できるようになった。その際に大きいのは、代々の宮司の意向である。現在の宮司、徳川康久氏は、徳川家最後の将軍、慶喜の曽孫であり、そのもとで、「賊軍(旧幕府軍)」の合祀の動きが起こっている。

 靖国神社は、「官軍」の戦没者を祀ることからはじまった。賊軍合祀は、その理念を根本的に変化させる。著者は、そこに靖国神社が本来の意義を失ってしまうことの危機を見ている。それが、書名にも反映されている。擁護でも批判でもない、これまでとは違う靖国神社論と言えるだろう。

 (小学館・1404円)

<みやざわ・よしひろ> 1958年生まれ。国学院大兼任講師。

◆もう1冊 

 堀雅昭著『靖国誕生』(弦書房)。新資料から、従来の神社とは異なる招魂社としての靖国神社のルーツを探る。

 

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