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【書評】

少子高齢化時代の私鉄サバイバル 森彰英 著

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◆利便性向上へ仕掛け

[評者]中沢孝夫=福山大教授

 東京や大阪などの通勤時間帯のラッシュが緩和されつつあり、またJRも私鉄も相互乗り入れが多様化し、目的別に鉄道が利用しやすくなっている。著者はそうした鉄道の進化の背景を丹念に調査し、「街」や「町」の変化と、そのための仕掛けなどを読み解いている。

 本書でも当然指摘されているが、鉄道づくりの話は、阪急の小林一三の構想力と実行力が有名である。沿線に住宅を開発し、宝塚など娯楽・文化施設をつくり、町をつくり、集客を増加させた。

 しかし、一九六〇年代以降の高度成長の時代は、東急の田園調布や小田急の成城学園などに見られる高級住宅街ではなく、多摩センターに代表される大規模な団地の形成が盛んになり、すし詰めラッシュが一般化した。だが本書を読んでいると、高架化や地下化なども進み、ラッシュの解消だけではなく、「開かずの踏切」も減少していることがわかる。

 また一方、豪華列車の登場や「婚活列車」、あるいはビュッフェのある近郊旅行列車、また必ず座れる指定席の通勤特急など、乗客の選択肢は多様になっている。それぞれの鉄道の知恵であるが、それが若者のクルマ離れの一因になっているかも知れない。

 地方にいると、鉄道の廃線の話題を聞くことが多いが、都市部の私鉄の進化は著しいようである。

(交通新聞社新書・864円)

<もり・あきひで> フリージャーナリスト。著書『東急の文化戦略』など。

◆もう1冊

 渡部史絵著『首都東京 地下鉄の秘密を探る』(交通新聞社新書)。その歴史や車両の変遷、難工事について解説。

 

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