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【書評】

風刺画とアネクドートが描いたロシア革命 若林悠 著

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◆社会主義の闇 色濃く

[評者]清水勲=戯画・風刺画研究家

 風刺画とは、事件の実態や社会の矛盾について、批判を込めて大衆にわかりやすく画で示すものである。

 本書は、第一次世界大戦の終結直前に起こったロシア革命(一九一七年)を、当時描かれたロシア、ドイツ、フランスなどの風刺画とコマ割り漫画およびアネクドート(ロシアの政治的ジョーク)を通して興味深く総括している。風刺画の点数は八十七点。ロシア革命に関する世界の主要な風刺画を集めた感がある。

 日本は大正デモクラシーの時代だったので、社会主義者はこの革命に大いに共感したようだが、この事件関連の風刺画はあまりない。その点で本書は、風刺画による貴重な証言集だといえる。

 本書で風刺される主たる対象者はレーニン、トロツキー、スターリンである。彼らを「革命家たち」「権力闘争」「独裁者」の三章に分けて紹介している。独裁者とはスターリンのことである。トロツキー暗殺など、スターリンの暗黒面を紹介した最終章は、社会主義国の宿命を強く感じさせる。フランスの風刺画は二〜六コマのものがほとんどで、しかも各コマに短い文章を付した「漫画漫文」スタイルのところが異色だ。

 風刺画は歴史の中から生まれる。そして、歴史書が語りつくせない部分をそれはカバーしてくれる。本書の価値はそこにある。

(桑野隆監修、現代書館・2376円)

<わかばやし・ゆう> 特に戦争関連のものを集めている風刺画収集家。

◆もう1冊 

 下斗米伸夫著『神と革命』(筑摩選書)。ロシア革命と異端宗派の関わりを明らかにし、「無神論」国家の真実に迫る。

 

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