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【書評】

東の果て、夜へ ビル・ビバリー 著

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◆常道を外れる道行き

[評者]新保博久=ミステリー評論家

 すでに「今年の翻訳ミステリーのナンバーワン」といった下馬評が優勢だ。当然ながら悪い作品ではないが、へそ曲がりの私は、無理にもアラ探しをしてみたくなる。一作で英国推理作家協会賞の最優秀長篇賞と最優秀新人賞とのダブル受賞であるのは快挙ながら、本国のアメリカ探偵作家クラブ賞は逃したものだ。アメリカ人読者よりイギリス人が好むようなひねった作品が支持されるのは、日本人も読む腕前を上げたのかもしれない。

 本書は犯罪小説、ロード・ノベル、少年の成長物語という三つの要素を兼ね備えているが、それらの要素がことごとく定型を裏返している。十五歳の主人公はボスであるおじの命令で、弟(殺し屋)らと四人でLA(ロサンゼルス)から五大湖のほうへ、日本列島が横に二つ並ぶほどの距離を車で向かう。ロード・ノベルの旅は、当てもないか善意の目的が多いのに反して、本書は裏切り者を殺すため。ふつうニューヨークあたりから西行きの話が多いのに、これも逆だ。

 旅の一同は黒人。白人たちに怪しまれないようドジャース(原題)のファンを装うが、むしろドジな連中で、御難続きなのはロード・ノベルの常道とはいえ、道中の仲間が増えていかない点が斬新だ。さらに、ロマンスなしに長丁場を保たせる難事をなし遂げている。おっと、これではアラ探しになっていないな。

(熊谷千寿訳、ハヤカワ文庫・994円)

<Bill Beverly> 1965年生まれ。米国の文学研究者。本書で作家デビュー。

◆もう1冊

 デニス・ルヘイン著『夜に生きる』(上)(下)(加賀山卓朗訳・ハヤカワ文庫)。ギャングと家族の歴史を描くミステリー。

 

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