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【書評】

女が美しい国は戦争をしない 小川智子 著

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◆幸せづくり生涯追求

[評者]桜木奈央子=フォトグラファー

 戦後、東京・六本木の焼け野原で「東洋一のサロンをつくる」という夢を叶(かな)えた女性美容家の一代記である。九十六歳まで現役を貫き、女性の美を追求し続けた姿が描かれている。

 のちにメイ牛山とよばれる高根マサコは昭和四年、十八歳で山口県から単身上京し、銀座「ハリウッド美容室」で評判の美容師になった。やがてアメリカ帰りの経営者ハリー牛山と結婚したが、戦争により美容室は苦境に立たされる。法律で禁止される前に最後のパーマネントをかけたいという女性たちで美容室が賑(にぎ)わうシーンが印象的だ。「どんな世の中になっても、女のおしゃれ心がなくなってしまうことはない」とマサコは感じる。

 疎開先の長野でも、マサコの美への情熱は冷めず、「美容教室」を開く。そこで女性たちがファッションやヘアメイクなどのおしゃれを楽しむことが家族や周囲の人を喜ばせることを目の当たりにして、より多くの女性たちを美しくしたいと思うようになる。

 「女性が美しく、心豊かな国は、本当の意味で豊かな国。その国は、絶対に戦争をしないでしょう」。九十歳になった彼女のこの言葉には強い説得力がある。自由におしゃれを楽しみ、美しくなりたい。より幸せに生きたい。そう願う気持ちはごく自然で、どんな状況でもそれが希望につながるのではないだろうか。

(講談社・1728円)

 <おがわ・ともこ> 脚本家。脚本作品に『イノセントワールド』『狼少女』など。

◆もう1冊 

 堀文子著『ひまわりは枯れてこそ実を結ぶ』(小学館)。戦争と無関係のものとして「美」を選んだ画家のメッセージ。

 

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