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【書評】

絶望図書館 頭木弘樹 編

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◆孤独に寄り添う物語

[評者]丸山正樹=作家

 「絶望」をキーワードに、古今東西の名作、異色作を集めたアンソロジー。副題にある「立ち直れそうもないとき、心に寄り添ってくれる」物語とはどういうものかと思いながら読み進めた。なるほど、単に「絶望的な物語」だけでなく、クスっと笑ってしまうものもあれば、奇想の書もある。絶望から立ち直るための方法が人によって違う(時には立ち直る必要さえない場合もある)ように、様々な棚が用意され、多様な心の動きに応じた作品が並べられてある。これはまさしく「図書館」なのだと感じ入った。

 児童文学、SF、ミステリー、エッセイ、漫画と、どの棚から読み始めるのも自由だ。個人的には「虫の話」(李清俊(イチョンジュン))という作品に強い印象を受けたが、この物語をはじめ「大切な人が(物理的に、あるいは精神的に)いなくなる」という話が複数収録されているのが興味深い。人が絶望する時というのは、真の意味で「孤独」を感じた時なのだろう。

 巻頭の太宰治、巻末のカフカの言葉、そして各作品に対する編者のコメントも味わいがある。これだけの作品を編(あ)めたのも、若い時から難病に苦しんできたという編者自身が、日々小さな絶望と寄り添いながら暮らしているゆえではないだろうか。そういう人はもちろん、そうでない人も、ちょっと心が弱った時にはぜひ本書を手にとってもらいたい。

 (ちくま文庫・907円)

 <かしらぎ・ひろき> 文学紹介者。編訳書『絶望名人カフカの人生論』など。

◆もう1冊 

 若松英輔著『生きる哲学』(文春新書)。寄る辺なき時にも新たな思索を切り開いた十四人の「哲学」を読み解く。

 

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