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【書評】

「ポスト宮崎駿」論 長山靖生 著

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◆ずばり、本命の名は。

[評者]中条省平=フランス文学者

 宮崎駿(はやお)の存在はあまりにも大きい。邦画の歴代興行収入で、百億円を超えた九本のうち五本が宮崎作品なのだ。

 その宮崎が引退宣言を行い、ジブリがアニメ制作をやめた二〇一四年、日本のアニメは危機を迎えた。しかし今、状況は変わりつつある。本書はそんな日本アニメの展望をコンパクトにまとめた、一般読者にも読みやすい好著である。

 「ポスト宮崎駿」の監督といえば、まず『攻殻機動隊』の押井守と『エヴァンゲリオン』の庵野秀明(あんのひであき)の名が挙がるだろう。ともに宮崎への傾倒と反発をもって独自の世界を開拓した異才だ。しかし、アニメを国民的娯楽として維持するには個性が強すぎる。いっぽう、『借りぐらしのアリエッティ』でジブリのアニメ作りを正統的に継いだ米林宏昌は優等生すぎてジブリの枠に縛られている。個性の発揮と完成度のバランスが難しいのだ。

 著者がポスト宮崎駿の本命とするのはずばり、『君の名は。』で興行収入歴代二位の記録を作った新海誠である。万人受けする波瀾万丈(はらんばんじょう)のメロドラマであるが、そこには、日本アニメの優れたスタッフを結集して描く風景描写の輝かしい美しさと、宮崎作品以上に日本の古典文学から物語を継承し、アニミズム哲学を打ちだす思想的な骨太さが共存している。そんな新海アニメの魅力を、本書は熱く縦横に語っている。

(新潮新書・821円)

<ながやま・やすお> 1962年生まれ。評論家。著書『「世代」の正体』など。

◆もう1冊 

 杉田俊介著『宮崎駿論−神々と子どもたちの物語』(NHKブックス)。作品に込められた思いを解き明かす作家論。

 

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