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【書評】

異次元緩和の真実 木内登英 著

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◆一時しのぎの矛盾を突く

[評者]服部茂幸=同志社大教授

 現在、日銀は年率2%の物価上昇を目標として異次元緩和を実施しているが、目標達成の目処(めど)は全く立たない。元日銀審議委員として、現在の日銀の政策を批判したのが本書である。

 異次元緩和は主に長期国債を購入することによって、実行されている。目標が達成できない現状では、購入量をさらに増やせということになろう。ところが、年八十兆円を超えていた購入量は、今では六十兆円を切っている。

 政府が発行した国債の全てを、持ち主が日銀に売却することはないであろう。こうして異次元緩和の弾切れが近づいてきた。審議委員として、木内氏がこれを早くから指摘し、購入量を年四十五兆円に引き下げることを提案していたことは本書に書く通りである。

 さらなる緩和策として、財政政策と金融政策を一体化させた「ヘリコプター・マネー」も議論されている。財政刺激を行っても、国債には利子を支払わなければならない。けれども、日銀の利益は最終的に政府の利益となるから、日銀に国債を保有させれば、利子負担は実質的にゼロとなる。このような方法で財政政策を支援することができる。広い意味ではヘリコプター・マネーは既に実施されているのである。

 それでも、返済期限がくれば、政府は増税し、日銀に元本を返済しなければならない。けれども、永久債を発行し、日銀に保有させれば、政府は元本の支払いも回避できる。

 しかし、目標達成の後には、財政引き締めと、日銀の国債売却が予定されている。本書はこの論理矛盾を突く。デフレ脱却のための、例外的で一時的な措置の恒久化が論理矛盾であることは明らかであろう。

 将来、金融政策を正常化させる時、日銀は国債を売却しなければならない。この出口の過程で日銀は多額の損失を被ると本書は述べる。結局、異次元緩和は目標を達成できるかという問題以前に、持続可能かどうかという段階で行き詰まっているのである。

(日本経済新聞出版社・2376円)

<きうち・たかひで> エコノミスト。日銀審議委員を昨年7月まで5年間務める。

◆もう1冊 

 明石順平著『アベノミクスによろしく』(インターナショナル新書)。異次元緩和をはじめアベノミクスを徹底検証し、大失敗と断ずる。

 

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