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【書評】

「本を売る」という仕事 長岡義幸 著

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◆あえて逆風に向かう

[評者]永江朗=フリーライター

 二十一世紀に入ったとき、全国に書店は約二万一千店あった。しかし現在は一万三千店を割り込むまで減った。閉店した書店の多くは「街の本屋」と呼ばれる個人経営の中小零細店である。

 街の本屋の現状を見るために、著者は全国の書店を訪ね歩いた。北海道から九州まで、その数およそ百。書店主たちの生の声が伝わってくる。

 零細店が廃業に至る理由はさまざまであり、複雑である。人口減少と商店街の衰退、出版市場の縮小、大型店との競争、後継者難など。他の小売業と共通するところも多いが、はっきりしているのは書店業が儲(もう)からない商売であること。もはや書籍と雑誌を売っているだけでは、ビジネスとして成立しないのだ。

 福島県小高町(現・南相馬市)出身の著者は、東日本大震災被災地の書店を丹念に見て回る。店主もろとも津波に流されてしまった店、閉店した店、営業を再開した店など、置かれている状況は多様だ。「被災地の書店の厳しい現状から、全国各地の書店の“未来”の先取り的な面もほの見えてきた」と著者は書く。

 しかし、それでも読む人に本を届けようとする人びとがいる。逆境のなかでも「街の本屋」であり続けようとする人びとが、本書にはたくさん登場する。とりわけ、新たに本屋を始める若い世代が少なくないことに希望を感じる。

(潮出版社・1728円)

<ながおか・よしゆき> フリーランス記者。著書『出版をめぐる冒険』など。

◆もう1冊

 柴野京子著『書棚と平台』(弘文堂)。購書空間の変容や取次の役割に着目し、出版流通というメディアを検証する。

 

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