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【書評】

原子力規制委員会 独立・中立という幻想 新藤宗幸 著

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◆機能不全の組織を見直す

[評者]山口幸夫=原子力資料情報室共同代表

 国の「エネルギー基本計画」が改定時期を迎えて審議が始まっているが、政権と「原子力ムラ」は、原発を基幹電源とし、再稼働、寿命延長、さらには、原発輸出までもたくらむ。フクシマ事故などはなかったかのように。

 これに対して、三・一一シビアアクシデントの記憶を「風化」させてはならないとする著者は、喜怒哀楽をかさねて暮らしてきた地域が「人間による統御不可能な巨大技術装置」によって奪われた現実を直視する。そして「三・一一東電福島第一原発のシビアアクシデントは、起こるべくして起きた」、その主因は、原発の安全規制機関が機能しなかったからと分析する。なぜか。国が原子力を導入した時点からの歴史的事実をふりかえりつつ、現在の原子力規制委員会とは何かを論ずる。

 原子力規制委員会はどう作られたか、どのような組織か、いかなる行政委員会か、「使命」に応えているか、さらには司法の姿勢について、行政学専攻の著者は実証的に詳しく述べる。

 アメリカの原子力規制委員会が「大統領からも連邦議会からも高度に自立した、まさに『独立規制委員会』である」のに、日本のそれは全くそうなっていない。人事も、事務局である原子力規制庁も、問題だと指摘する。

 新規制基準は「世界一厳しい基準」などではなく、大飯原発3、4号機の再稼働問題で、島崎邦彦前委員の基準地震動再々計算の提言は拒否された。また、深層防護の第五層への対処は審査対象から外されている。

 原子力規制委員会は「独立性」「中立性」に加えて「公開性」「専門性」「市民性」をもたねばならないとし、国会に安全規制のための専門調査組織を設置し、国会によるダブルチェック体制をつくれ、それは現行の法体系の中で可能だ、と提言。日本の政治・経済・社会の全般にわたる見直しが問われている、と説く。市民に必読の一書だ。

(岩波新書・886円)

<しんどう・むねゆき> 千葉大名誉教授。著書『行政指導』『技術官僚』など。

◆もう1冊

 磯村健太郎・山口栄二著『原発と裁判官−なぜ司法は「メルトダウン」を許したのか』(朝日新聞出版)。元裁判官らが明かす原発訴訟。

 

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