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【書評】

登山者のための法律入門 溝手康史 著

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◆リスクの備え万全に

[評者]笹倉孝昭=山岳ガイド

 タイトルにある「法律」という言葉を見て、自分には関係のないことだと敬遠する人がいるかもしれない。しかし、本書は法律についてだけ書かれたものではなく、すべての登山者が知っておくべきリスクマネジメントについて書かれた本だといえる。

 落石で他人にけがをさせたら、山でたき火をしてもいいのか、高校生の冬山登山は禁止できるのか、ツアー登山で起きた事故の責任は−等々。法律の専門家であり登山家である著者の説明は、実際の登山状況を巧みに分類し、初級者や学校登山の引率者、ツアーガイドから山岳ガイドに至るまで、どの立場の人が読んでも納得できるように、読みやすい工夫がされている。何よりも常に登山者目線に徹していて、法律の本というよりも山の本を読んでいると感じさせてくれるのがユニークだ。

 登山のリスクと言えば、雪崩や落石、低体温症や凍傷など「事故のリスク」は誰しも思いつくが、実際には「法的リスク」も同時に存在している。著者は、法的リスクをむやみに恐れるのではなく、正しい知識を持ち、要因を切り分けて評価すれば対応可能だと説く。本書は、多くの登山者がこれまであまり気にしてこなかったもうひとつのリスクに気づかせ、回避する取り組みを示してくれる啓蒙(けいもう)の一冊だ。

(ヤマケイ新書・972円)

<みぞて・やすふみ> 1955年生まれ。弁護士。国立登山研修所専門調査委員。

◆もう1冊

 笹倉孝昭著『高みへ−大人の山岳部』(東京新聞)。登山の技術や理論、道具や救助の方法などを体系的に解説。

 

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