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【書評】

外国人が熱狂するクールな田舎の作り方 山田拓 著

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◆暮らしが生む美しさ

[評者]藤山浩(こう)=持続可能な地域社会総合研究所所長

 外国人相手に手っ取り早く稼ぐノウハウ本として手にとった方は、肩透かしを食らうであろう。本書は、いかに手間暇かけて、国際派ビジネスマンが飛騨の田舎で新たな暮らしと観光ビジネスを根付かせていったのかという地道な〜だからこそ本物の歩みを描いている。

 大学卒業後、グローバルなコンサルティング会社で稼いでいた著者は、三十歳を機に五百日余の世界旅行に出る。帰国した時の結論は「日本の田舎に住もう!」だった。世界中回ったからこそ見えてきた日本の田舎の美しさや持続可能性の再発見プロセスが、面白く共感できる。

 帰国してから飛騨に通い、家を見つけ、観光ビジネスに乗り出すまでの紆余(うよ)曲折が、実は本書のハイライトだ。実際に田舎の集落に住んでいる私から見て、えらいなと思うのは、田舎の「不合理性」を一方的に断罪せず、折り合いをつけていく著者の姿勢である。そして「暮らしを旅する」を基本コンセプトに、満足度の高い体験型ツアーで成功していく。

 そんな著者が田舎に求めるものは、地域の美しい未来を創りたいという「暮らしの意志」の結集なのだ。今の時代、自分たち世代限りの「逃げ切り」を考えがちな中高年もいる。そんな人にぜひ読んでほしい。田舎の美しさは、世代を超え手間暇かけた営みの賜物(たまもの)なのだから。

(新潮新書・799円)

<やまだ・たく> 1975年生まれ。株式会社「美(ちゅ)ら地球(ぼし)」代表取締役。

◆もう1冊

 藤山浩著『田園回帰1%戦略』(農文協)。地域を安定持続させるために毎年人口の1%を取り戻す戦略を提案。

 

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