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【書評】

イップス 魔病を乗り越えたアスリートたち 澤宮優 著

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◆人生の試練は突然に

[評者]後藤正治=ノンフィクション作家

 イップスという、ふとしたことで起きる運動障害がある。本書は野球やゴルフ選手の実例をたどりつつ、イップスの意味するものを探っている。日本ハムのエースだった岩本勉は投球の乱れに、ヤクルトの土橋勝征(かつゆき)は送球ミスに、ゴルファーの佐藤信人(のぶひと)はパター不振に苦しんだ。イップスは突如やってくる。心理的なものなのか、技術的なものなのか、複合したものなのか…要因は単純ではない。

 その改善策も一様ではない。これという決め手はなくて、それぞれが自身に適した方法を見つけるまで長い時間を要している。イップスとは、ひと筋縄ではいかない、心的な要素がからんだ運動障害であることが伝わってくる。

 イップスになって良かった−佐藤の言葉である。送球に悩んだ元日本ハムの森本稀哲(ひちょり)は、イップスにならなければここまでの選手になっていない、とも口にしている。試練に直面し、さまざまに苦労して改善策に取り組んだことが、選手として、また人としての成長を促してくれたという意である。

 イップスは誰にも起こり得る。人生を歩んでいく上での試練と考えれば、普遍的なものにつながっている。困難に直面し、もがきつつ課題に取り組んだことが、結果として、意味ある何かをもたらしてくれたというような。

(KADOKAWA ・ 1620円)

<さわみや・ゆう> 1964年生まれ。ノンフィクション作家。著書『打撃投手』など。

◆もう1冊 

 内田直監修・石原心著『イップス−スポーツ選手を悩ます謎の症状に挑む』(大修館書店)。症例、症状などを解説。

 

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