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【書評】

ホロヴィッツ 20世紀最大のピアニストの生涯と全録音 中川右介、石井義興 著

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◆人生を映す1200の音盤

[評者]山口雅敏=ピアニスト

 来年で没後三十年を迎える二十世紀最大のピアニスト、ウラディミール・ホロヴィッツ(一九〇三〜八九年)は、今もなおカリスマ的なオーラを放ち続けている。八三年にようやく実現した初来日公演は、五万円のチケット代にもかかわらず、争奪戦となる社会現象に。彼は生きながらに伝説となった巨匠である。世界各国での演奏会に愛用の楽器スタインウェイを運ばせることができたのも、彼ならではの特権だ。

 超人的なピアニズムは、全身にアドレナリンが駆け巡るほどの興奮と官能、麻薬のような中毒性を聴き手にもたらす。故中村紘子氏は、彼の芸術を「禁断の木の実」と表現したが、私はそれを味わったばかりに人生が大きく変わる。本書の共著者、石井義興氏もその一人で、ホロヴィッツの全録音を収集した世界有数のコレクターである。本書は千二百余点の音盤(SP、EP、LP、CD、DVD)の全録音データやジャケットを掲載し、綿密に調査された中川右介氏による伝記と共に読み進められる画期的な内容だ。

 近年、全ての音源がCD化され、音楽遺産の全貌を耳にできるようになった。年代によって異なる演奏スタイルも彼の魅力だが、それには波乱に満ちた人生が大きく影響していることも、本書から読み解くことができる。彼の伝説は永遠に受け継がれるのだ。

 (アルファベータブックス・2700円)

 <なかがわ・ゆうすけ> 作家、編集者。

 <いしい・よしおき> ソフトウエア技術者。

◆もう1冊 

 中川右介著『二十世紀の10大ピアニスト』(幻冬舎新書)。ラフマニノフからグールドまで絡み合う人生と音楽。

 

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