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【書評】

沖縄 憲法なき戦後 古関彰一・豊下楢彦 著

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◆米軍にささげた「捨て石」

[評者]田仲康博=国際基督教大教授

 沖縄に基地が集中したのは地政学上の理由によるのではなく、そこが「無憲法状態」にあったからだ。そう指摘する本書の論旨は明快そのものだ。本書は沖縄をめぐる日米関係や国際情勢を細かく分析することで、戦後沖縄をめぐる問題を解き明かす。特筆すべきは、憲政史と外交史の専門家である両著者が当事者たちの発言を丁寧にひろいあげることで、歴史の現場の臨場感あふれる描写に成功していることだ。

 沖縄の運命を決める政策決定の<現場>に当の沖縄は不在であった。本書を読めば、沖縄を憲法の埒外(らちがい)に置くことが両政府にとって決定的に重要だったことがよく分かる。そうすれば米軍は一切の制約を受けることなく、島を軍事目的のために利用できたからだ。

 それはまた、自国の安全を確保するために米軍を引きつけておきたい日本にとっても好都合だった。この点において、沖縄を「潜在主権」によってつなぎ留め、同時にアメリカに統治上のフリーハンドを与えることを提案した昭和天皇の「沖縄メッセージ」の役割は大きい。彼や日本政府にとって沖縄は、戦後になってもなお「捨て石」でしかなかったというわけだ。

 その後の沖縄を呪縛する「構造的差別」の仕組みは、講和条約と安全保障条約によって作られた。本書によると、沖縄の軍事支配は国際法上の根拠を欠くもので、基地の維持は米軍にとって綱渡りのようなものだった。日本政府がそこを突けば、沖縄の返還はもっと早くに実現されていたことだろう。しかし、歴代の政権には沖縄を事実上の植民地に留めおくという発想しかなく、沖縄の人々の人権や自由や生命が彼らの視野に入ることはなかった。

 現在も、事態はいささかも変わっていない。そこで本書は、沖縄が「東アジア軍縮同盟」の起点となるよう提言する。それはしかし、国家が主体であっては空論にしか過ぎない。国家をどう相対化するか。すべてはそこにかかっている。

 (みすず書房・3672円)

 <こせき・しょういち> 獨協大名誉教授。

 <とよした・ならひこ> 元関西学院大教授。

◆もう1冊 

 伊勢崎賢治・布施祐仁著『主権なき平和国家』(集英社クリエイティブ)。日米地位協定をドイツ、韓国などと比較し、問題点を提示。

 

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