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【書評】

元号 所功、久禮旦雄、吉野健一 著

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◆災害と吉祥も重ねて

[評者]鈴木洋仁(ひろひと)=社会学者

 「平成」の終わりまで一年を切った。

 「国の内外にも天地にも平和が達成される」という意味がこめられた元号は、まもなく終わる。

 元号は古代中国・前漢武帝による「建元」が始まりとされる。日本では、西暦六四五年の「大化」から現在まで続いている。明治以後の一世一元を原則とする制度としては、もはや世界で唯一だ。

 本書は、そうした歴史について、ひとつひとつ仔細(しさい)な検討を重ねる。この積み重ねにより、あたかも元号を主人公に据えた大河ドラマのような読後感を与えてくれる。新書としては、やや大ぶりな本書の重みは、記述の充実だけではなく、著者たちが丹念に描き出す、元号の歴史そのものの重厚さにほかならない。

 古来、改元は、天皇の即位以外にも頻繁に行われていた。亀の献上や出現などの良いこと(祥瑞(しょうずい))に由来した時代を経て、十世紀ごろには災害などを理由とした災異改元が増えてくる。

 また、「大正」以降は、政府が公式に発表している読み方についても、「明治」以前はほとんど明示されていない。

 こうしたさまざまなエピソードを、本書は教えてくれる。巻末に付された日本の年号候補・未採用文字案を参照しながら、来年の改元に向けて、元号を通して日本や天皇の過去と未来に思いを馳(は)せる座右の書となるに違いない。

 (文春新書・1080円)

<ところ・いさお> 京都産業大名誉教授。

<くれ・あさお> 京都産業大准教授。

<よしの・けんいち> 丹後郷土資料館学芸員。

◆もう1冊 

 鈴木洋仁著『「元号」と戦後日本』(青土社)。元号は戦後どんな意味を持ち、歴史意識にどう作用したかを解明。

 

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