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【書評】

百貨店の展覧会 昭和のみせもの1945−1988 志賀健二郎 著

写真

◆ジャンルを切り開く

[評者]安村敏信=美術史家

 本書は、戦後昭和の百貨店で催された展覧会を、年代ごとの特徴的なジャンルを取り上げる手法で紹介している。すると、そこでは近年になってようやく公立美術館で開催されるようになった展覧会のジャンルが先駆けて行われていた事実が浮かびあがり、驚いた。

 例えば写真。一九五六年に日本橋高島屋でニューヨーク近代美術館写真部長の企画による国際展が開かれたのを皮切りに、報道写真展や写真家の個展などが行われてきた。また、美術館ではまだ珍しい漫画の展覧会も、百貨店では四七年以降、さまざまに開催されている。

 こうした美術展ばかりではなく、夏休み定番の昆虫や爬虫類(はちゅうるい)を展示する生物展やロボット、鉄道などの子供向けの科学展、さらには児童画展も開催された。大人向けにも行政PRの防犯展や正しい性への啓蒙展、文学展など、実にさまざまな展覧会が催されてきたことは興味深く、その幅広さに改めて感心する。

 本書は東京都内の百貨店に限った約八千件のデータに基づく検証であり、海外ではあまり例のない百貨店での展覧会が果たした文化的貢献を再認識させてくれる好著である。ところで、正月といえば浮世絵展という時期があったが、浮世絵をはじめ本書で扱い切れなかったジャンルがたくさんあるのは「あとがき」にあるとおりだ。ぜひ続編を期待したい。

(筑摩書房 ・ 2700円)

<しが・けんじろう> 1950年生まれ。渋谷ファッション&アート専門学校校長。

◆もう1冊 

 飛田健彦著『百貨店とは』(国書刊行会)。明治、大正、昭和と庶民のファッションや文化をリードした百貨店の歴史。

 

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