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【書評】

日本の分断 切り離される非大卒若者(レッグス)たち 吉川徹 著

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◆属性が固定する格差

[評者]橋本健二=早稲田大教授

 「格差社会」は平成日本で最大の流行語のひとつだが、それ自体は単純な言葉で、格差の原因や構造については、何も表していない。私は社会のしくみに踏み込んだ、より明確な呼び名を使った方がいいと考え、これまで「階級社会」という言葉を使ってきた。

 これに対して本書が提唱するのは「分断社会」である。著者によると、社会が流動化した今日、不安定化した職業や収入より、学歴や世代など、変わることのない基本属性の影響力が強まっている。

 多くの格差は大卒と非大卒の学歴の違いと結びついている。雇用は一九七五年以後に生まれた世代で不安定化した。男女の間には大きな格差がある。こうして人々は、所属を変えることのできないグループに分断される。著者は三つの組み合わせから八つのグループを抽出し、データ分析にもとづいて、これらの間の格差を鮮明にえぐり出す。

 とくに注目されるのは、低所得で雇用も不安定ながら、社会を底辺で支える若年非大卒男性(レッグス)、同じく低所得ながら高い出生力で社会の存続を支える若年非大卒女性である。勝ち組の壮年大卒層からきちんと所得税を徴収し、彼ら・彼女らをサポートすべきだという提言には説得力がある。属性によって人生が決まる社会は、好ましい社会ではないからである。文章は明晰(めいせき)で読みやすい。

 (光文社新書・929円)

 <きっかわ・とおる> 1966年生まれ。大阪大教授。著書『学歴分断社会』など。

◆もう1冊 

 ブレイディみかこ著『労働者階級の反乱−地べたから見た英国EU離脱』(光文社新書)。分断突破は知ることから。

 

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