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【書評】

美空ひばり 最後の真実 西川昭幸 著

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◆沖縄公演が持つ意味

[評者]齋藤愼爾(さいとうしんじ)=文芸評論家

 戦後の焼け跡から出現した昭和の天才歌姫、美空ひばり。今年は没後二十九年になるが、いまもテレビやラジオでその歌声が流れない日はない。また、毎年五月二十九日の誕生日、六月二十四日の命日には各地で生誕祭や偲(しの)ぶ会が開かれるなど、人気に陰りはみられない。

 本書の書名に偽りはない。初めて明かされる秘話が満載。『美空ひばり公式完全データブック』を編んだ著者だけに博捜は徹底している。芸能の特異な体質にも通暁しているので、安心して読める。

 ひばり関連本は自著を含めて約三百冊もあるのに、ひばりと暴力団との関係、小林旭との「理解離婚」などについて、真実が語られることはなかった。「暴露本だけは避けたい。しかし、できるだけ真実に迫りたい」と内心の葛藤を繰り返しながら、著者は暴露本を出した関係者に接し、暴露記事を書くことを拒み新聞社を辞めた記者の遺族を訪ねもする。

 なかでも復帰前の沖縄とブラジルでの公演の章は圧巻だ。沖縄の人びとにとって、ひばりが来るという事実は「沖縄が本土の一部だということを理屈でなく確認できる出来事だった」。現地で<棄民>と揶揄(やゆ)され、先の戦争では敵国民として差別と迫害を受けたブラジル移民の熱狂も感動的に再現される。心底からひばりを「不世出の天才」と信じている著書の姿勢に評者は共感を覚えるのである。

 (さくら舎・1944円)

 <にしかわ・のりゆき> イベントプロデューサー。著書『日本映画一〇〇年史』など。

◆もう1冊 

 斎藤完(みつる)著『映画で知る美空ひばりとその時代』(スタイルノート)。映画作品から大スターのすごさを伝える。

 

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