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【書評】

太陽を創った少年 トム・クラインズ 著  熊谷玲美 訳

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◆とんがる才能どう伸ばす

[評者]石浦章一(同志社大特別客員教授)

 「僕はガレージの物理学者」という副題のとおり、十四歳で核融合炉をつくった米国の少年の実話である。本題は、放射性物質を集めてきて自宅ガレージで核物質の実験を行った天才少年の物語なのだが、父母をはじめ周囲の当惑し、うごめく人たちの話が、とにかく面白い。

 この少年テイラー・ウィルソンもそうだが、米国では社会を変革したり、知識を前進させたり、文化を作りかえたりするイノベーターの多くは、十代で知的能力の上位1%に入っているという事実は驚きだが、これら「ギフテッド(才能を授かった)」と呼ばれる人たちには運も必要という指摘は重要だ。マーク・ザッカーバーグ、ビル・ゲイツ、スティーブ・ジョブズ、そしてレディー・ガガも。どんなグループにも必ず上位1%はいるので、それが表に出てこない国には何かしら問題がある。

 本書は、子どもをどう育てるか、ということに関して示唆を与えてくれる点も多い。古くから『サイエンティフィック・アメリカン』誌に連載されていたコラム「アマチュア・サイエンティスト」を見て、テイラーをはじめとする若者が科学を目指すようになったとあるが、これは本当だろう。私を含めた多くの友人も、当時、同誌日本版に連載されていたマーティン・ガードナーの「数学ゲーム」に影響され、科学者になった。今の日本では、若い才能をどう発掘するか、その後、意欲をどこに向かわせるかを、指し示す人材が不足していることは深刻に考える必要がある。

 本書は天才の出現をめぐるドキュメントだが、日本にはこういう子はいない、こういう放射性物質を扱う環境にないと残念がったり、ポピュラーサイエンス向きに大げさに書いてあって怪しいんじゃないのと斜に構えたりするよりも、子どもたちのとんがった才能を伸ばす教育システムをどう構築するかが問題なのである。

 自分の子どもがギフテッドと考えている親が99%もいるという調査結果には、笑ってしまった。

(早川書房・2700円)

『ポピュラー・サイエンス』の寄稿編集者を務めるジャーナリスト。

◆もう1冊 

R・イグノトフスキー著『世界を変えた50人の女性科学者たち』(創元社)

 

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