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【書評】

ルポ 保育格差 小林美希 著

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◆健やかな育ちがないがしろに

[評者]普光院亜紀(保育園を考える親の会代表)

 いまや日本では一・二歳児の半数近くが保育園等に通う。三歳以上児も合わせた全就学前人口で見ても、四割以上が保育園等に通っており、保育園等は日本の次世代の人格形成期を育んでいる。にもかかわらず、その質に関わる危機感が高まっている。

 本書の帯には「ほいくえんいきたくない。せんせい、やさしくない…」という子どもの言葉が綴(つづ)られている。保育園に子どもを通わす親が、絶対にわが子から聞きたくない言葉だ。保育園を、保育士を信じられなければ、親は安心して働くことができない。

 本書の第1章では、保育園等の元職員らが目の当たりにした信じられない保育の数々が明かされる。指示に従わなかった子どもに暴言を吐き、部屋から閉め出す、腕をつかんで振り回す、泣きすぎて吐くまで叱(しか)る…。児童虐待として通報できるレベルであり、もはや保育とは言えない。

 子ども一人一人にていねいに関わり育む、質の高い保育園も数多く存在している。しかし、急激に増加する保育施設の間には、質の格差が大きく広がり始めている。

 その背景に何があるのかを、本書は旺盛な取材により多面的に掘り下げている。特に、子どもの保育の質を保障するために出される公費が、目的どおりには使われていない実態を、詳細な分析であぶり出し、数字を挙げて鋭く切り込む第2章は圧巻だ。

 また、他の章では、待機児童対策における需要予測が甘くなった理由、保育園の次に控える学童保育(放課後児童クラブ)の危機的な問題にも光を当てる。

 保育園も学童保育も「足りない」ことばかりが注目されているが、枠を増やした結果、子どもの健やかな育ちが保障できなくなるのでは増やした意味がないことに、国や自治体は早く気がつかなければならない。

 本書は、たくさんの事例とデータにより、そのことに気づかせてくれる。広く読まれ、子どもを中心とした議論に結びつくことを期待したい。

(岩波新書・907円)

1975年生まれ。ジャーナリスト。著書『ルポ 産ませない社会』など。

◆もう1冊

普光院亜紀著『保育園は誰のもの』(岩波ブックレット)

 

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