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【書評】

ソウルフード探訪 東京で見つけた異国の味 中川明紀 著

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◆日本の食材で再現する故郷

[評者]野崎有以(詩人)

 本書は、全国の約二割の在留外国人が住むという東京を中心に、各国のソウルフードを食べ歩きながら、その意味を読者とともに考えていこうという本である。B級グルメから特別な日の料理まで、バラエティーに富んだ料理が登場する。

 「ハーツ・クライ(心の叫び)」。本書を読み終えて、そんな言葉が余韻のように思い浮かんだ。ソウルフードとは、心が求めずにはいられない料理のことではないだろうか。本書に登場する人々に共通するのは、日本で手に入る食材が限られているなかで、故郷の味に近づけるべく、あらゆる努力をしていることだ。その姿には異国の地で故郷の食を忘れまいとする執念のようなものすら感じた。

 外国からやって来た人々のなかには、政情不安だった故国から難民として逃れたのちに、日本に居を構えた人々もいる。カンボジアのお好み焼き「バンチャエウ」を紹介する箇所では、インドシナ難民支援施設についての言及がある。施設に入所する人々は大きな荷物を抱えてきたが、そのほとんどが食べ物や料理の道具だったという。

 ネパール人学校では八割ほどの子どもがタルカリ(スパイスを使った料理)をお弁当として持参する。学校設立の背景には、日本に出稼ぎに来た両親が子どもと一緒に暮らせるように、との思いがある。多くの保護者が手間のかかる故郷のお弁当を持たせるところをみると、料理がただ単に空腹を満たすためだけのものではないことがよくわかる。

 事情があって家族が共通の言語を話せないパターンもいくつかあった。しかし、家族の間をつないでいるのが故郷の食事、ソウルフードなのだ。ソウルフードは家族や友人だけでなく、初めて会った人々の心さえつないでいく。深い思いの詰まった料理である一方、「誰でも食べていいよ」という気軽さもある。ラオスの人々は、挨拶の代わりに「ご飯を食べましたか」と聞くのだそうだ。優しさと温かさと気軽さ。それがソウルフードだ。

(平凡社・1728円)

ライター。「ナショナル ジオグラフィック日本版サイト」で食の連載を持つ。

◆もう1冊

沼野恭子編『世界を食べよう!』(東京外国語大学出版会)

 

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