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【書評】

一発屋芸人列伝 山田ルイ53世 著

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◆その後の人生 温かい目で

[評者]高田文夫(放送作家)

 髭(ひげ)男爵の山田ルイ53世がにこやかに発する「ルネッサーンス!」はフランス語で「再生」とか「復活」を意味する言葉だとか。又吉直樹が芥川賞を獲(と)ったと思ったら、先日は漫才コンビ「カラテカ」の矢部太郎が手塚治虫を冠した立派なマンガ賞を獲った。芸人たちも野球の大谷翔平に負けじと二刀流である。

 そして、本書がなんと「第24回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」で作品賞に選ばれた。貴族のような格好をして大きなワイングラスで相方のひぐち君と「ルネッサーンス」なんてやったのは十年前か。この男も筆を持ってしたたかに生きていた。そしてその筆で、ある意味仲間でもある一発屋たちのその後の人生をしぶとく聞き回り、みごとな「筆芸」で少しの笑いと大きな感動を与えてくれた。

 ひょんなことから一発が当たってしまった栄光とそのすぐ後に待っている凋落(ちょうらく)と挫折。芸人だけにつらい。「芸は人なり」ともいう。これは濃すぎるフィクションのような実はノンフィクションなのだ。「一発屋」とひとくくりにされはするが、この芸能界で一発当てるのがどれだけ大変なことか。この一発が当てられない芸人が、この数千倍はいるのだ。一瞬でも夢を見た男たちは、いまでもしっかり舞台に(たとえそれが地方の営業でも)、そしてこの大地に家庭に足を下ろし、前を見すえて皆生きている。

 山田ルイ53世だから腹を割ってしゃべってくれた栄光の男たちは「フォー」のレイザーラモンHG、「なんでだろう〜」のテツandトモ、「残念!」の波田陽区(はたようく)、「右から左に受け流す」ムーディ勝山、「あると思います」天津・木村、「安心してください。はいてますよ」とにかく明るい安村。それにジョイマン、キンタロー。、コウメ太夫、ハローケイスケ。最後はキッチリと自分たち「髭男爵」のことにも筆は及ぶ。

 いまを生きる仲間たちへの優しい目とちょっと引いた物書きとしてのその筆さばきの塩梅(あんばい)がいい。一発屋はもっと古くからいっぱいいる。続編を願う。

(新潮社・1404円)

お笑いコンビ「髭男爵」のツッコミ担当。著書『ヒキコモリ漂流記』。

◆もう1冊 

水道橋博士著『藝人春秋』(文春文庫)。人気芸人たちを描くエッセー。 

 

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