東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > Chunichi/Tokyo Bookweb > 書評 > 記事一覧 > 記事

ここから本文

【書評】

ナチスに挑戦した少年たち フィリップ・フーズ 著

写真

◆戦う14歳の思いを伝える

[評者]岩間建亜(クレヨンハウス総合文化研究所編集部長)

 第二次世界大戦時、ドイツ軍の占領下にあったデンマークでの実話だ。戦争や政治についてはほとんど何も知らない、絵を描くことが好きな十四歳の少年、クヌーズ・ピーダスン。しかし彼は一九四〇年四月九日、二、三時間でヒトラーに降伏してしまった祖国デンマークの大人たちを、兄や仲間たちと同じように恥ずかしく思っていた。抵抗運動(レジスタンス)をしようというと、大人たちは決まってこう答えるからだ。「いや、それはできない……待ったほうがいい……まだ、われわれには力が足りない……むだに血を流すだけだ!」

 大人たちの言葉に、少年の全身は怒りでふるえてくる。だれも何もしようとしない。大人たちがなんといおうと、デンマークの自由をゆずりわたすことを、断固として自分たちは拒否する。「大人がやらないなら、ぼくたちがやる」。少年たちは、チャーチルクラブと呼ぶ抵抗組織を結成する。武器は、青いペンキとハンマーと自転車から。奇襲を得意として、襲っては逃げる。その手法を磨きながら。

 しかしこの本は、訳者あとがきにあるように「少年たちの抵抗運動を英雄物語のように書いたものではない」。クヌーズと著者フィリップのふたり語りで進むが、ドイツ軍占領下のデンマークの世相、とりわけ大人や少年たちの思いが厳しく伝わってくる。そんな中でも女の子への憧れや米国の女優への性的な関心も、思春期の少年たちらしく挿入されていて、戦時下でなかったら彼らの青春はどんなにか自由に充(み)ちていただろうと想像する。

 やがて少年たちは逮捕され、クヌーズと兄イェンスはそれぞれ二年一カ月の刑期をつとめた。クラブのメンバーのその後も知ることができて、読後は満たされる。

 最後に、日本のいまの十四歳について気になりながら読んでいたことを告白しておきたい。この国のクヌーズと同じ年頃の若者は、沖縄や北朝鮮、自衛隊や改憲問題など、戦争や平和について友人たちと語り合うことがあるだろうかと。そして大人たちは?

(金原瑞人訳、小学館・1620円)

全米図書賞受賞作家。米国の児童文学賞コルデコット賞を2度受賞している。

◆もう1冊 

『子どもたちへ、今こそ伝える戦争−子どもの本の作家たち19人の真実』(講談社)

 

この記事を印刷する

PR情報