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【書評】

腸と脳 エムラン・メイヤー著

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◆脳と連絡?驚きの腸内細菌

[評者]河崎洋志(金沢大教授)

 腸まで届くことをうたい文句にする乳酸菌飲料などが売れていることからもわかるように、以前より腸内細菌への関心は高かった。だが最近、最先端科学技術によって健康や病気についての腸内細菌の全く新しい役割がつぎつぎと発見されてきたことが、腸内細菌への注目を一気に高めることとなった。驚くべきことに、腸内細菌は脳とも密接に関係していることが明らかになりつつある。本書は、この腸内細菌と脳というとても魅力的な組み合わせについて、ワクワクする驚きの新事実を臨場感をもって伝えている。「この本を読み終わるころには、あなた自身と周囲の世界の見えかたは刷新されるはずだ」と書いてあるのも、あながち過言ではない。

 本書は大きく三部構成となっている。はじめに、脳と腸内細菌がいかにコミュニケーションを取っているかを教えてくれる。脳は頭の中に、腸内細菌は腸の中にあり直接つながってはいない。この身体(からだ)の中で離れた場所に存在する二つがどのような仕組みで連絡を取り合っているか解き明かす。さらに、本来はネコを避けるはずのネズミを、ネコ好きにしてしまうという不思議な微生物も登場する。

 第2部では腸内細菌とストレスや病気とのつながりについて注目する。幼少期のストレスが腸内細菌に影響を及ぼすのはもちろん、妊娠中の母親のストレスですら生まれてきた赤ちゃんの腸内細菌に影響を及ぼすことが明らかになっている。またおもしろいことに、腸内細菌が性格に影響を及ぼすとの実験結果も鮮やかに描かれている。

 第3部では食習慣の改善により腸内細菌を整え健康になる可能性を提示する。腸内細菌を整えるための具体的な提案をしているが、著者も書いているように効果について結論を出すためには、大規模な臨床試験を行う必要があるだろう。

 腸内細菌は、脳や心臓などと同列の一つの臓器と考えてもよいのではないかとすら言われている。謎に満ちたフロンティアを知る楽しみが本書のなかにある。

 (高橋 洋ひろし訳、紀伊國屋書店・2376円)

 ドイツ生まれの胃腸病学者。カリフォルニア大ロサンゼルス校教授。

◆もう1冊 

 上野川修一著『からだの中の外界 腸のふしぎ』(講談社ブルーバックス)

 

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