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【千葉】

<大人って…18歳成人の課題> 児童養護施設出身者と考える(上)

成人年齢が引き下がると「生活の場を自分で選べる」と話す川瀬信一さん=千葉市で

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 かつて非行に走ったり、罪を犯したりした子どもたちに社会科を教える、県内の児童自立支援施設教諭の川瀬信一さん(28)は、実家を出て一人暮らしを始めたときのことを今も覚えている。

 母親から身体的虐待やネグレクト(育児放棄)を受けてきた川瀬さん。物心付いたときから、川瀬さんの実家はごみであふれていた。浴槽もごみで使えず、銭湯に通った。積み上がったごみの上に布団を敷いて寝た。

 中学一年から高校卒業まで、里親の元や児童養護施設などを転々とした。高校卒業と同時に児童養護施設を退所し、父親が一人で暮らす実家に戻った。だが、母親が実家に戻ってきたため、児童相談所(児相)を頼り、アパートで一人暮らしを始めた。十八歳の時だった。

 民法では、二十歳未満は親の同意なしにアパートの賃貸契約を結ぶことができない。一方で、児童福祉法は、児童を原則十八歳未満と規定。例外的に二十歳まで延長できるケースもあるが、児童養護施設で暮らすことができるのは、原則十八歳未満に制限される。

 このため、高校を卒業後に児童養護施設を退所し、親を頼ることができない十八歳と十九歳の若者は、暮らす場所を見つけることが困難な状況に追い込まれている。

 川瀬さんはおじ、おばに保証人を頼んでアパートを借りることができ、児相職員に引っ越しを手伝ってもらった。アルバイトで稼いだ貯金や奨学金を利用し、千葉大、同大学院に進学し、教員免許を取った。「児相職員やおじ、おばなど信頼できる人がいた。私はレアケース」と振り返る。

 政府は早ければ通常国会に、民法の成人年齢を二十歳から十八歳に引き下げる改正法案を提出する見通しだ。川瀬さんは「心理的、物理的に親から自立したい子どもが、生活の場を自分で決められる」と期待する。

 一方で「十八歳とはいえ、すぐには自立できず失敗もする。生活保護申請に一緒に行ってくれたり、就労支援の相談に乗ってもらうなど、頼れる場がもっと増えると良い」と話す。

 親の虐待や貧困などで行き場のない十五〜二十歳未満が自立を目指す自立援助ホームを巡っては、昨年五月の児童福祉法改正で、今年四月からは大学などに進学している場合には、二十二歳の年度末まで利用できるようになる。

 自立援助ホームのNPO法人「子どもセンター帆希(ほまれ)」(千葉市)理事長で千葉大大学院の後藤弘子教授は成人年齢の引き下げについて「病院の入退院や進学など、親の同意がなくても子どもができることが増える」と語る。その上で「施設を出た後も、子どもたちが戻れる居場所や、本来なら親がする生活支援などのサポートは、引き続き必要だ」と強調した。

     ◇

 児童養護施設出身の二人は、民法の十八歳成人をどう受け止めるのか。二回に分けて紹介します。 (黒籔香織)

<児童養護施設> 親がいなかったり、虐待や経済的理由、病気などで親が育てることが難しい原則18歳未満の子どもを受け入れる施設。厚生労働省によると、2015年10月1日現在、全国に602カ所あり、2万7828人が暮らす。進学をする子どもで、両親を頼れずに住む場所がない場合は、児童相談所が認めれば、児童福祉法では20歳を迎えるまで施設で暮らすことはできる。

 

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