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【千葉】

<へぇ〜 再発見ちば> 陸上競技 合宿の聖地(富津市)

汗をかきながら走る子どもたち。暑さ対策のため、三田翔平さん(中央)が水をかけてあげていた=富津市で

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 夏休みに入った七月下旬。東京湾からの風がそよぐ富津臨海陸上競技場(富津市)では、子どもたちが汗をかきながらトラックを周回する。

 「がんばれー」「水を飲みながらでいいから」と声をかけるのは三田翔平さん(29)。東京都渋谷区の陸上クラブチーム「スポーツマジック」の代表で、小中学生三十五人と一泊二日でやってきた。

 箱根駅伝を走り、実業団に所属した三田さんは「ここは浜辺やクロスカントリーコースがあり、人が少ない。のびのびできるのがいい」と、都内と違った雰囲気を楽しむために、チームで毎年訪れる。

 市内には陸上競技場のほかに、五・六キロの周回コースが設けられた富津公園、山の方に行けば信号や車が少なく適度な高低差がある県道など、走る環境に恵まれている。陸上の合宿地として人気が高まり、四、五軒の宿泊施設が選手を受け入れている。

 「十月から三月まで、今シーズンも大学や実業団のチームでほぼ埋まっています」。市内で旅館「志ら井」を営む白井正志さん(53)は、予約表を手に話す。大きな大会の最終調整などで、二十人ほどが一週間貸し切りで利用することが多いという。

 銀座で料理の修業を経て白井さんが宿を始めたのは、バブル真っただ中の一九九一年。海水浴や、近くの発電所や製鉄所の改修などで働く人が泊まっていた。客足は季節で左右されるうえ、景気の低迷で企業の設備投資が落ち込むと客足が遠のいた。冬場に客が一カ月いないこともあった。

 「オフシーズンに客を呼べないか」。初めて陸上合宿を誘致したのは二十年前。地元のマラソン選手の紹介で、強豪の女子実業団チームに来てもらった。

 当時は昭和二十年代に建てられた民宿を借り受けて営業していた。古くて浴室は小さく、「こんな所じゃ合宿できない」と監督に言われた。何度も訪れてもらいたいと、カロリーを考えた料理や柔軟な食事時間などの要望を聞きつつ、施設の改修を重ねてトップアスリートに対応していった。

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 「融通が利く」と陸上関係者の間で評判となり、利用するチームが増えていった。箱根駅伝の前に、出場校が市内で練習する様子がテレビなどで取り上げられると、春から秋にかけて、一流選手の気分を味わいたい一般ランナーや子どもたちにスポーツ合宿が広がっていった。

 八年前に新築移転。四つの洗濯機や二十四時間対応の浴室のほか、充実した部屋干しスペース、走るフォームをチェックできるビデオルーム、ベッドのある洋間を設けた。バリアフリーの設備でパラアスリートもやってくる。今では半数の宿泊客が陸上合宿を目的にする。

 「細かく設定された練習時間に合わせて、午前中は食事をずっと作り続けることもある」と大変さも話す白井さん。「陸上だけでなく、いろいろなスポーツの合宿地になれば」と地域全体の取り組みが盛り上がるのを期待する。 (村上豊)

 

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