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【千葉】

<原発避難 ふるさとを返して>(下)「地域や人間関係 崩壊」 「ふるさと喪失」の慰謝料も請求

千葉地裁判決を控え9月2日にあった集会で、勝訴への願いを語る原告団代表の遠藤行雄さん(手前)ら原告たち=千葉市で

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 「何代も続いた家がこんな形で消えてしまう無念さは筆舌に尽くしがたい苦悩で、生涯、消えない」。今月二日、千葉市内で開かれた原発避難者千葉訴訟の原告や支援者らが参加した集会で、福島県浪江町議を十六年務めた原告の男性(87)は、声を絞り出した。

 男性は原発事故で浪江町から長女の住む鎌ケ谷市へ避難し、現在は横浜市で暮らす。浪江町の自宅には、先祖の位牌(いはい)や両親、妻らの遺品など、多くの思い出の品を残したままだ。事故前は生きがいだった稲作も今はできず、米を買わなければならない。

 男性は、原発事故直後に避難者が十数万人に上ったとし「家族はばらばら、地域の歴史、文化、伝統などが崩壊の危機にさらされた。解散したコミュニティーも多くある」と訴えた。

 全国で約三十件の同種訴訟が起こされており、最初の判決となった三月の前橋地裁判決は、津波は予測できたとして、国と東電に賠償を命じた。

 前橋訴訟の原告は、避難を強いられた精神的苦痛に対する慰謝料として一律に千百万円を請求した。これに対し、千葉訴訟の原告は、避難生活に伴う慰謝料の他、自然豊かな故郷での生活や仕事、人間関係を奪われた「ふるさと喪失」の慰謝料として一人二千万円を請求している。

 原告の弁護団長の福武公子弁護士は「判決で、生活の再建ができるようなきちんとした賠償を認めてほしい」と話す。

 二〇一三年の提訴から四年半。提訴時に十八世帯四十七人だった原告のうち、これまで六人が亡くなった。原告の資格を受け継いだ遺族を含む四十五人が、二十二日の判決を迎える。

 弁護団によると、原告には国の避難指示区域内からの避難者だけでなく、区域外から避難した一世帯四人なども含まれる。この訴訟とは別に、避難指示区域外から千葉県に避難した六世帯二十人が一五年六月、損害賠償請求訴訟(第二陣訴訟)を起こし、現在も千葉地裁で審理中だ。

 避難指示区域外からの避難者に対し、福島県は今年三月いっぱいで、家賃補助を含めた住宅の無償提供を打ち切った。

 千葉県によると、打ち切り後の四月時点で、県内に暮らす区域外からの避難者は百九十五世帯。家賃などの金銭負担が重い人も少なくない。支援団体「避難の協同センター」(東京)の瀬戸大作事務局長は「母子家庭などは特に金銭的に問題を抱え、支援が必要」と指摘する。

 原告たちは、避難指示の区域内外で区別せず、全員に同等の賠償を求めている。原告や支援者たちが公正な判決を求めて集め、千葉地裁に提出した署名は、これまで五万百八十八人分に達した。

 原告団代表の遠藤行雄さん(84)は「判決で勝利することで、志半ばで亡くなられた原告の方々に報いたい」。ふるさとを奪った原発事故に対する国と東電の責任を明確にし、被害を償ってほしい−。原告たちは同じ願いを胸に、司法の救済を待っている。 (中山岳、美細津仁志)

 

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