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【千葉】

<へぇ〜 再発見ちば> 刀剣専門の「塚本美術館」(佐倉市)

収蔵刀を手入れする三角さん

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 佐倉城の城下町だった佐倉市中心部の狭い路地の一角に、こぢんまりとたたずむ美術館がある。塚本美術館。刀身四百点、拵(こしらえ)と呼ばれる外装二百五十点を収蔵する国内有数の日本刀専門の美術館だ。平安末期から現代まで、評価額が億単位の逸品や人間国宝が手掛けた名品も大切に保管されている。

 入館するには建物の外で靴を脱がなければならない。館内にごみが入り込むのを極力防ぐためだ。砂粒などの硬い粒子は、ごく小さなものでも刀身を傷つけてしまうという。入館者名簿に記入し、そろりと二階の展示室に向かう。

 ガラス越しの刀身には生々しさと迫力がある。鉄の光沢と、さびを防ぐ油のヌメヌメ感。切っ先から曲線を描くほっそりした造形、焼き入れでできる刃文(はもん)、折り返し鍛錬で生じる木目のような模様など、それぞれが個性的だ。

 副館長で学芸員の三角正人さん(68)は「日本刀には鋭さから来る美しさがある。全部手作りで同じものはない。折れたり曲がったりせず、持ち主の身を守ることを願う刀匠の祈りが宿っているようにも感じる」と魅力を話す。

鎌倉や室町時代の日本刀を鑑賞する人たち=佐倉市の塚本美術館で

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 一人でも多くの人に日本刀の素晴らしさを知ってもらいたいと、入館料を取らず、館内の写真撮影も自由。三時間ほどかけて見学する人もいるという。

 実在する名刀を擬人化した美男子のキャラクターが登場するゲーム「刀剣乱舞」が人気を博した。年間千人程度だった来館者数は、ゲーム人気に伴い一昨年から増え始め二・五倍に。九割が女性で、ゲームファンの「刀剣女子」が全国から訪れる。

 ゲームのキャラで人気が高い同田貫上野介(どうたぬきこうずけのすけ)(正国)の実物を鑑賞できる場所は、ほかに熊本県の博物館だけ。新選組の沖田総司が愛用したことで知られる加州清光(かしゅうきよみつ)の脇差しも注目の的だ。これらの刀工の作品をそろえた企画展「近ごろ話題の刀剣展II」が、十二月十六日まで開かれている。

 刀は平安時代以降の武士社会で日本文化を象徴する存在だった。美術館の収蔵品は、佐倉市出身の実業家で、総合武術の立身(たつみ)流免許皆伝でもあった塚本素山(一九〇七〜八二年)が終戦直後、進駐軍による接収から日本刀を守ろうと買い集めたものだ。塚本素山は美術館の初代館長を務めた。

 三角さんは「収集家は好みが偏るものだが、素山の場合、出物なら何でも積極的に入手したので美術館に生きた。どんなテーマの企画展でも収蔵品だけでやれる」と胸を張る。

 他の美術館や博物館では、収蔵する多くの刀剣類は保管庫などに眠ったまま。手入れできる専門家が少ないためだという。塚本美術館では三角さんが四十五年、収蔵品を手入れし続けており、見学できる状態に保たれている。「日本刀は優れた芸術品で、日本の重要な文化遺産。ぜひ見るといいです」と来館を勧める。 (小沢伸介)

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<塚本美術館> 1965年、東京・銀座の塚本総業本社ビルに「日本刀美術館」として開館。68年に千葉市に移転して規模を拡大し、塚本美術館と改名。83年に現在地に移った。2011年に公益財団法人に認定され、博物館法に基づく登録博物館となった。午前10時〜午後4時開館。入館無料。駐車場4台。土、日、月、祝日休館(第3土曜日は開館)。佐倉市裏新町1の4。電043(486)7097

 

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