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【千葉】

<家族のカタチ>(2)安全届ける農業 種をまく 無農薬野菜を直売、ネット販売

収穫した無農薬野菜を手にする花島綾乃さん(手前)と、(奥の左から)堀川隼さん、のり子さん、善和さん=いずれも松戸市で

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 赤いラディッシュ、真っ白なカリフラワー、泥つきのネギ…。松戸市五香西の農園「綾善(あやぜん)」のオーナー花島綾乃さん(24)は「おいしくて安全な野菜を、もっと広めたい」とほほ笑む。

 綾乃さんは、家族四人で綾善を営む。自宅そばの約十五アールの畑でとれる野菜は、農薬は使わず、市場に卸さない。自宅脇の直売所で売り、インターネットで野菜セットを販売する。

 三代続く農家に生まれた。幼いころは父の善己(よしみ)さんが働く畑で、弟と泥だらけになって遊んだ。父からは「好きなことをやりなさい」と言われ、育った。だが、高校一年の時、善己さんは動脈瘤(りゅう)で倒れ、五十二歳の若さで亡くなった。

 高校卒業後、飲食店でアルバイトをしていた。二年ほど前、栄養士で子育て中の友人から、子どもに無農薬野菜を食べさせたい、と言われたことが、父と同じ農業の道を選ぶ転機になった。「作ってみようかな」。善己さんの死後、手付かずだった畑を使い、昨年二月に綾善を始めた。

 昨年六月、直売所に初めて来た女性が、ジャガイモやインゲンなどを買ってくれた。数日後、今度は園児くらいの男の子を連れて来た。子どもがおいしいと喜び、親子で買いたいと言ってくれた。

 ネット販売の野菜セットも、子育て中の親らの心をつかみ、全国から注文が来る。綾乃さんは、野菜セットに直筆の感謝の手紙を必ず添える。「小さな商いだからこそ、顔が見えないお客にも気を配りたい」と、毎日のように書く。

 とれたて野菜の画像を共有アプリ・インスタグラムに掲載し、ブログでは日々の作業などを発信する。「若い人に農業を身近に感じてほしい」からだ。

 弟の善和さん(23)は栽培を手伝い、ネットの顧客管理を担当する。無農薬栽培は、農薬を使う場合に比べ、野菜の育ちが遅い。雑草もよく生える。苦労はあるが、「子どもや孫を連れたお客から、おいしいと聞くと、何よりうれしい」。

無農薬野菜の箱詰め作業で話し合う花島綾乃さん(左)と、弟の善和さん

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 綾乃さんの婚約者、堀川隼(しゅん)さん(33)は一年前まで不動産会社で営業をしていた。会社を辞めてから本やネットで無農薬栽培を学び、六十種以上を育ててきた。二人は、意見がぶつかることも。「畑で相手が引くこともあれば、家庭で私が引くこともある。バランスが大切」と堀川さんは笑う。

 県内の農家は、担い手の高齢化が進み、後継者不足が深刻。耕作放棄地も増えている。でも、二人は「やり方次第で、農業は可能性がある」と前向きだ。今年、結婚する予定で、将来は、近くの耕作放棄地を借り、栽培を増やしたいと、夢は広がる。

 「子どもに農業を継げとは言わなかったけど、お父さんも喜んでいるんじゃないかな」。直売所を手伝う母、のり子さん(53)は、優しいまなざしで語った。 (中山岳)

<農家の減少と高齢化> 農林水産省の「農林業センサス」によると、県内で農業に就く人口は、2005年に約11万8600人だったが、10年約9万3900人、15年約7万3400人と減少。平均年齢は05年62.7歳、10年64.8歳、15年65.6歳と、高齢化している。

 県によると、県内の耕作放棄地は、08年に8949ヘクタールだったが、毎年拡大し、15年は1万3492ヘクタール。

 

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