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【千葉】

<家族のカタチ>(4)異国で絆、タイ人ゾウ使い 市原の動物園に5家族18人

ゾウ語で「サワディー」と鼻を上げる号令をかけ、ゾウやゾウ使いたちをまとめるロイ・サムランチャイさん(手前)=市原市の市原ぞうの国で

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 昨年十二月中旬、市原市の動物園「市原ぞうの国」。朝どれの竹を豪快にほおばっていた子ゾウが、後ろ足を園路の柵に乗せた。その瞬間、タイ人のゾウ使いサム・サムランチャイさん(45)による愛のこもった指導が始まった。「パオーン」。子ゾウはわびるように鳴き声を上げた。

 広報担当の佐々木麻衣さん(38)は「人の子育てと同じ。『いい子、いい子』だけでは駄目なんです」と教えてくれた。

 市原ぞうの国では、アジアゾウ九頭とアフリカゾウ一頭が暮らす。あまり知られていないが、腕の良さを買われて来日したタイ人のゾウ使い五家族計十八人が、「ぞうさんショー」などを手がけている。

 「日本一のゾウの飼育頭数」を誇る市原ぞうの国。訪れた人たちは、目と鼻の先まで近寄ってえさを与えたり、長い鼻につかまって写真撮影もできる。ゾウ使いたちのおかげで、ゾウと人との信頼関係が築けているからだ。

 全てのゾウ使いから一目置かれているのが、サムさんの兄ロイ・サムランチャイさん(48)。一日二回のショーのプロデューサーとして、企画の構成や演出で腕をふるう。

 古くからゾウ使いが多く暮らすタイ東北部のスリン県出身。ロイさんはゾウと友達のような環境で育ち、十五歳で一人前のゾウ使いになった。十五年ほど前、先に働いていた同郷の先輩の紹介で、市原ぞうの国にやって来た。

 妻子はスリン県で暮らす。母国を離れる際に三歳だった長男は、高校三年生になった。昔も今もゾウ使いの家の子どもは、仕事優先の考えや経済事情などから学校とは縁遠い。だが、ロイさんは日本で得た給与を妻に仕送りし、長男を高校に進学させたのが誇りだ。

巧みなゾウさばきで来園者を持ち上げるロイ・サムランチャイさん(上)

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 長男は今春、高校を卒業する。その後の進路が気になるが、なかなか聞き出せない。「ぞうの国でゾウ使いとして一緒に働いてほしい」と思う半面、家業の継承が難しい時代であることも分かっている。「本人がしたいことがあれば、それは自由だ」と語る。

 家族のために続ける単身赴任生活。家族とは一年に数回も会えないが、日本でのゾウ使いの「大家族」との暮らしが支えになっている。弟のサムさん、いとこの子のワタナ・サランガーンさん(29)ら八人で毎晩同じ食卓を囲む。同じ部屋で暮らす最若手のワタナさんには「まじめが一番」と仕事の心構えを説く。

 「日本での暮らしは幸せだ。ゾウと過ごす時間が私の人生だから」とロイさん。ゾウの群れは女系社会で、大人の雄は群れから出て暮らす。遠い異国でゾウ使いとして生きるロイさんの人生に重なって見えた。 (美細津仁志)

 

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