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【千葉】

<家族のカタチ>(7)乳搾り、演劇などで酪農発信 アイデア生かし集う牧場

「牛の生き死にを見ているからこそ、牧場に生かされていると感じる」と話す(右から)須藤裕紀社長、由紀乃さん、健太さん、陽子さん=館山市安東の須藤牧場で

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 「気軽に立ち寄れる牧場に」。三代目の須藤裕紀さん(53)一家が営む館山市安東の「須藤牧場」。祖父の代の昭和初期、三頭の乳牛から始まった牧場は、今では乳牛約百三十頭を飼育。酪農の魅力を発信する劇団の上演や小学生らの乳搾り体験などを通じ、幅広い年代が集う場となった。

 妻の陽子さん(54)が嫁いだ当時はバブル期で、友人がきらびやかな格好で夜の街で遊ぶ中、陽子さんは朝から晩まで仕事に追われた。「当時の牧場は臭くて、汚い。友達を呼んでも恥ずかしくない牧場にしたかった」と振り返る。

 夫婦でまず取り組んだのは仕事の効率化だった。裕紀さんが二年間、アメリカの牧場で学んだことをヒントに、牛を一頭ずつつなぐのではなく、自由に歩き回る「フリーストール」の牛舎に建て替えた。ふん尿の清掃も機械化。牛の頭数は大幅に増えたが、労働時間を、それまでの一日十二〜十三時間から半減できた。

 教員免許を持っていた陽子さんは、空いた時間で幼稚園児や小学生らの酪農体験の受け入れを始める。まだ体験学習が一般的でなかった九〇年代。牛の出産や牛乳ができるまでの過程を分かりやすく紹介するプログラムを作り、多い時で年間九十回の体験学習を受け入れた。

 陽子さんは「子どもたちに話すから牛の世話もしっかりやらないといけないし、牛舎もきれいに保たないといけない」。古い牛舎を改築してアイスクリーム作りや羊毛クラフトの体験も始め、一般見学者も受け入れるようになった。

 須藤牧場では須藤さん夫妻をはじめ、長女由紀乃さん(27)、次男の健太さん(25)のほか、パートを含めて十人が働く。

 「牧場や酪農を知ってもらうきっかけにしたい」。後継ぎの健太さんは、学生時代に没頭した演劇を通じ、牧場の魅力を発信する。二〇一四年、東京で暮らす声優の兄・高伸さん(29)と劇団「須藤兄弟」を立ち上げ、毎年五月の連休中に牧場で上演する。一七年には三日間で約二百五十人が来場した。将来、牧場に常設の劇場を建てたいと考えている。

 調理師免許を持つ由紀乃さんは一〇年、搾りたての牛乳を使ったソフトクリームを実演販売する店を牧場内にオープン。大好きな車やバイクを店内に展示すると、バイクツーリングの男性たちが、立ち寄ってくれるようになった。

 それぞれのアイデアや特技を生かした牧場経営。「毎日、生まれたての子牛の生き死にを見ている。牛と牧場がなくては何もできない。全員に『牧場に生かされている』という意識がある」。裕紀さんは誇らしげに語った。 (黒籔香織)

 須藤牧場では2月4日と3月3日、乳搾り体験や牛にまつわる話を聞き、県内の農家が生産した野菜やハムを使った軽食を味わう催し「みんなもFarmersday」を開催する。大人2160円、小学生は1080円。定員30人で先着順。問い合わせは同牧場=電0470(22)9732=へ。

 

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