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【千葉】

臨海部で石炭火力計画 大気汚染など住民ら懸念

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 県内の臨海部の2カ所で建設計画が進む石炭火力発電所を巡り、地域住民らから反対の声が上がっている。2011年3月の東京電力福島第一原発事故後、低コストの石炭火力発電計画が次々に浮上。太陽光など再生可能エネルギーへの転換を求める声もある中、火力発電所の建設を目指す事業者と、大気汚染などを懸念する住民らの間では意見の隔たりが大きい。 (中山岳)

 千葉市での建設計画は、JFEスチールと中国電力が出資した「千葉パワー」(東京都千代田区)が、臨海部にあるJFEの敷地(千葉市中央区川崎町)に出力約百七万キロワットの「(仮称)蘇我火力発電所」を建てる予定。二〇二〇年に着工、二四年の運転開始を目指している。

 千葉パワーは今年一月、大気中の粉じん、騒音などの影響を調べて予測する「環境影響評価(アセスメント)」のための方法書を公開。今月八日まで住民の意見を募った。今後、経済産業相から勧告を受け、評価項目などを決める。

 二月七日に千葉市内であった住民説明会では、地域住民らから「新たな大気汚染につながらないか」「国際的には脱炭素の流れがある」といった意見が相次いだ。

 千葉パワー側は、最先端の処理施設を整備し、火力発電に伴うばい煙を抑えると説明。千葉パワーの芦谷茂社長は「可能な限り環境対策をし、皆さんの理解を得ながら進めたい」と話した。

 建設予定地の周辺は戦後、川崎製鉄(当時)の製鉄所からのばい煙による公害が深刻化。健康被害を受けた住民らが一九七五年に同社を提訴し、十七年余の裁判を経て九二年に和解した経緯がある。

千葉市の住民らが今月3日に開いた、石炭火力発電所計画の課題を考える勉強会=同市で

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 地域住民らでつくる「蘇我石炭火力発電所計画を考える会」はこれまで、石炭火力の課題を考える勉強会を複数回、開催してきた。会員の伊藤章夫さん(75)は「ばい煙や二酸化炭素(CO2)の排出量も増える。子どもや孫の世代のことを考えると、反対だ」と話す。

 県内では原発事故後、千葉市、市原市、袖ケ浦市の三カ所で石炭火力発電所の新設計画が浮上。市原市の計画は、採算面を理由に昨年三月に中止になったが、袖ケ浦市では「千葉袖ケ浦エナジー」(九州電力、出光興産、東京ガスの三社が出資)が、二〇年代半ばの運転開始を目指し、環境影響評価の手続き中だ。

 事業者が石炭火力を選ぶ背景には、コストが安く高効率で発電できるなどの理由がある。だが、石炭火力の抑制を目指す海外の動きとは逆行している。一六年十一月に地球温暖化対策の国際枠組みのパリ協定が発効。欧州を中心に「脱炭素社会」を目指し、太陽光などの再生可能エネルギーの導入が進む。

 石炭火力発電所の新設を巡っては、日本の環境省と経産省の間でも温度差がある。昨年三月、山本公一環境相(当時)は千葉市の計画に「環境保全面から、極めて高い事業リスクを伴う」との意見書を世耕弘成経産相に提出。世耕経産相は「石炭火力は電力の安定供給など優れた面もある」とした。

 倉阪秀史・千葉大大学院教授(環境政策論)は「石炭火力は短期的に見ればコストが安いが、環境への影響を考えれば論外だ」と指摘する。「エネルギー計画は短期的な利潤追求だけでなく、長期的な持続可能性も含めた判断が必要。国には、太陽光など再生可能エネルギー基盤の経済へ転換する政策が求められている」と話している。

<エネルギー基本計画> 政府が3〜4年ごとにまとめる中長期的なエネルギー政策の運営方針。2014年に策定された現行計画は、地熱、一般水力(流れ込み式)、原子力、石炭をコストが低く安定的に発電できる「ベースロード電源」と位置付けた。今年は現行計画の改定が予定され、有識者会議が3月をめどに見直し案をまとめる。

 政府は現行計画を踏まえた30年度の電力需給の見通しで、全電源に占める太陽光、水力などの再生可能エネルギーの割合を約22〜24%とし、石炭は約26%、原子力は約20〜22%とする目標を掲げている。

 

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