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【千葉】

<家族のカタチ>(13)富津のシェアハウス ぬくもりが働く意欲に

「田舎フリーランス養成講座」の受講者らと食卓を囲む「まるも」の野里店長(手前中央)=富津市金谷で

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 二月中旬、富津市金谷のコワーキングスペース(個人向けオフィス)の「まるも」で、全国から集まった十〜四十代の男女十三人が真剣な表情で話し合っていた。一カ月間、住み込みでウェブサイトなどでお金を稼ぐノウハウを学ぶ「田舎フリーランス養成講座」の受講生たちだ。

 この日のテーマは「将来の目標の発表」。仕事漬けの生活で体を壊し、デザイン会社を辞めたというグラフィックデザイナーの柳田優(やなぎたゆう)さん(30)=神奈川県海老名市=は「会社勤めだけが人生ではない。独立して自分のペースで仕事をしていきたい」と話した。

 働き方改革が叫ばれる中、時間や場所が制約されず、個人で仕事を請け負う「フリーランス」(個人事業者)にも注目が集まっている。

 講座は、どんな環境でも自分らしく働いて暮らせるようにと、「まるも」を運営する地元のITベンチャー企業「ポンヌフ」が二〇一六年二月に始めた。講座内容は、ウェブサイトの記事の書き方や仕事の取り方、広告収入を得る方法など。受講料は十五万円。講座中の実習だけで十万円を稼ぐ人もいるという。

 まるもには、風呂やトイレが共同のシェアハウスが五棟あり、受講生はここで寝泊まりする。月二万〜三万円台の家賃と海山に近い環境を求めて、都会から移住してきたブロガーやカメラマンなどのフリーランスも二十人以上が暮らす。まるもは日中の仕事場でもあり年六回の講座期間中は四十人近い大所帯となる。

 夕食は希望制で月六千円。フリーランスの「先輩」も加わって数日おきに当番で料理を作り、オフィスで一緒に食べる。年齢や立場を超えて、身の回りのことや仕事の悩み、時には将来のことも語り合う。

 受講生で、福岡県内の大学の夜間学部に通う中尾俊介さん(20)は開講五日目、スランプに陥った際、部屋での一人酒に仲間が集まり、励ましてくれたという。「ただの同居人なのに、日増しに親しみを感じる」

 ウェブライター野里和花(のざとのどか)さん(24)=鹿児島市出身=は、子どものころ両親が離婚し、家族とは何かを考えてきた。大学時代にはLGBTなど性的少数者の学生支援団体にいたこともある。そんな経験から、卒業論文は「離婚とLGBTから考える新しい家族のかたち」をテーマに選んだ。論文には、性的少数者の住まいやひとり親世帯の子育ての問題を挙げ、暮らしで悩みを抱える人たちにシェアハウスは有効、と書いた。

 実際にシェアハウスに住んだことはなかったが、一六年十一月、講座に参加してまるもに住み始めると、「やっぱり良いもんだ」と思った。毎晩入居者と夕食を囲み、誕生日にはケーキで祝ってもらった。お互いが素をさらけ出し、支え合う共同生活に、今まで味わったことのないぬくもりを感じた、という。

 「他人でも家族と変わらない関係を築ける」と野里さん。今はポンヌフ社に就職し、まるもの店長を務め、講座も運営する。シェアハウスは価値観を変え、人生を見つめ直す場と考えている。 (美細津仁志)

  =終わり

 

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