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【千葉】

絶滅危惧種のアホウドリ 木彫模型で繁殖に貢献

求愛行動のポーズを取るアホウドリのデコイと内山春雄さん=我孫子市で

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 木彫りで野鳥を再現する「バードカービング」づくりを通じ、絶滅危惧種のアホウドリの保護に取り組む我孫子市在住の野鳥彫刻家・内山春雄さん(68)が、日本鳥類保護連盟総裁賞に選ばれた。内山さんは「(伊豆諸島の)鳥島でアホウドリの繁殖が順調に進んでいるという朗報と、自分の受賞が時期的に重なって感慨深い」と話す。 (堀場達)

 連盟が東京で十三日に開催した「全国野鳥保護のつどい」で表彰された。最高賞の総裁賞を授与されるのは、環境大臣賞の受賞経験者。同賞を受賞してから、十年後も現役で活動している人が対象となる。

 内山さんは、岐阜市出身で、もともとは、欄間などの装飾として発展を遂げた伝統工芸の「木象嵌(もくぞうがん)」の職人。一九八〇年ごろ、連盟から「愛鳥教育や啓発で使う、鳥の模型を作ってくれないか」と依頼されたのが、バードカービングに関わるきっかけだった。

 「仕事の幅を広げるため、木象嵌で鳥を表現しようと考えていたこともあり、勉強になると二つ返事で引き受けた」。鳥の生態を学んだり、剥製を観察したりするため、全国各地に出向いた。博物館などから「剥製代わりに展示したい」とバードカービングの注文が舞い込むようになった。

 九一年からは、アホウドリの繁殖や保護に、内山さんのバードカービングが用いられるようになった。「誘因力のあるデコイ(おとり)を鳥島に置くことで、アホウドリの生息域を広げられ、繁殖しやすくなるのではないか」

 アホウドリ研究の第一人者として知られる東邦大の長谷川博名誉教授に協力し、この年はまず二体のデコイを手掛けた。雨風にも耐えうるデコイにするため、通常とは異なり、木彫で原型を作り、プラスチック樹脂で仕上げた。

 鳥島に人工物を持ち込むには国の許可が必要だ。長谷川さんから「効果がなければ、二度と持ち込めなくなる」と厳しく求められ、内山さんは、ふだん以上に「細部まで本物そっくりのクオリティーの高いデコイ」を心掛けた。

 内山さんが鳥島に送り込んだアホウドリのデコイは計約百体に及ぶ。求愛行動、抱卵状態など、さまざまな行動ポーズを効率よく取れるように、首、胴体、足の部品に分け、現地で組み立てる工夫も加えた。

 内山さんの元には、総裁賞受賞の知らせと前後して、長谷川さんから、鳥島のアホウドリの生息数が「五千羽を超えた」との連絡が寄せられたという。「一度は絶滅したといわれた鳥の復活に貢献できて幸せ」と内山さん。

 内山さんはナベヅル、トキなど、アホウドリのほかにも、野鳥保護を目的としたデコイを作ってきた。目の不自由な人に、触ってもらうことで鳥の形や大きさを分からせる「タッチカービング」の普及にも熱心。「バードカービングの多彩な可能性を探っていく」と意欲十分だ。

<アホウドリ> 明治から昭和初期にかけ、羽毛目的の乱獲などのために激減し、戦後の1949年の調査で1羽も見つからず、一時は絶滅したと考えられていた。62年に国の特別天然記念物に指定。20世紀後半には伊豆諸島の鳥島と尖閣諸島の北小島、南小島でのみ繁殖を確認。21世紀に入り、小笠原諸島などでも繁殖しているのが見つかった。成鳥は全長1メートル近くの大型の海鳥で、夏季はベーリング海やアラスカ湾などで過ごし、冬季は繁殖のため、日本近海に南下する。環境省のレッドリストで「絶滅の危険が増大している種」の絶滅危惧II類と判定されている。

 

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