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【千葉】

<ひとキラリ>庶民の歴史を掘り起こす 元千葉大教育学部教授・宮原武夫さん(85)

「続 船橋の歴史散歩」を出版した宮原武夫さん=千葉市で

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 「庶民の歴史を知らないと、本当の歴史は分からない」−。元千葉大教育学部教授の宮原武夫さん(85)が、著書「船橋の歴史散歩」の続編を出版した。船橋市内の講座などで使った資料を基に書き起こした。明治維新の戊辰(ぼしん)戦争で敗れた幕府軍を地元住民が「脱走(だっそ)様」と呼んだり、放牧場から馬が逃げ出さないよう江戸幕府が設けた野馬土手の内側で、近隣住民が入会地をつくっていたことを伝えるなど、地域の歴史を丹念に掘り起こした。 (保母哲)

 宮原さんは大学卒業後、習志野高校定時制(夜間)の教諭になるとともに、大学院にも通った。五十四歳で千葉大助教授となり、教授も務めた。専門は日本古代史・歴史教育。

 歴史研究を始める契機になったのは戦争体験。旧制船橋中一年の夏に終戦となり、「小学生時代は軍国教育を受け、中学生になると民主教育。百八十度違うことを教えられ、世の中は変わると知った。変わった理由を知るには、歴史を学ぶしかない」との思いから、研究者・教育者の道を選んだという。

 これまでの著書は「日本古代の国家と農民」「子どもは歴史をどう学ぶか」など。大学退官後、船橋市で公民館や観光協会などの歴史講座を担当し、市内の史跡や文化財を巡った。二〇一一年に「船橋の歴史散歩」を出版。今回の続編は、その後の講座資料を基にした。

 「続 船橋の歴史散歩」は、「船橋大神宮の祭神」「船橋御厨(みくりや)と伊勢信仰」といった十三項目で構成した。戊辰戦争で逃げてきた幕府兵を、住民が「脱走様」と呼んだ理由として、宮原さんは二つが考えられるとする。

 「相手に親しみを感じる人も、恨みを持つ人も、平等に供養するという仏教の教えがあった」「船橋大神宮境内に徳川家康・秀忠を祭る常磐神社があるように、船橋の人は家康に特別の思いを持っていた」

 講座などでは、歴史に学ぶ大切さを説いてきた。「なぜ、ここに神社や馬頭観音があるのかと疑問に思い、調べてみる」、続いて「その時代を生きた人々、特に庶民の生活ぶりを考えれば、現在の風景が違って見えてくるはずです」と説明する。

 今回出版した続編が「最後の著書と思っていた」と話す宮原さん。船橋市内から三月、千葉市稲毛区に引っ越し、「今度は稲毛って、どんな歴史があるんだろうと考え、調べ始めている」。研究者としての思いは変わらない。

 「続 船橋の歴史散歩」はA5判、二百七十一ページ。崙(ろん)書房出版(流山市)から出版し、二千円(税別)。

 

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