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【千葉】

井伏鱒二が旅した房総 生誕120年で随筆紹介

「若い人たちが文学に興味を持つきっかけに」と話す市原善衛さん=八街市内で

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 作家井伏鱒二(一八九八〜一九九三年)が千葉を訪れた際のエピソードをつづった随筆を紹介した冊子「井伏鱒二と房総」を、日本文学風土学会会員の市原善衛さん(68)=八街市=が発行した。今年は井伏の生誕百二十年の節目。「井伏が目にし、生き生きと描いた風景を知ってほしい」との思いを込めた。 (太田理英子)

 市原さんによると、釣り好きで知られた井伏は青年期や六十代の頃に県内を旅行したという。一九五九年に発表した「外房の漁師−釣師(つりし)・釣場(つりば)」では、旧大原町(現いすみ市)の漁港で女性たちが手際良くイワシを水揚げする様子を描いている。

井伏鱒二が市原善衛さんに返信した手紙とはがき。冊子でもそのやりとりが紹介されている=八街市内で

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 六三年発表の「佐原の釣」では、旧佐原市(現香取市)で友人と漁船に乗り込み、フナやハヤを釣り上げた時の様子などもつづる。

 市原さんは十代の頃から房総にゆかりのある作家、文学作品に関心を持ち、成田市役所に勤めながら研究を続けてきた。八五年からは井伏の随筆も調べ始めたという。

 八七年には「返事は来ないだろう」と半ば諦めながらも、井伏に手紙を送って千葉の知人との交流などについて尋ねたところ、すぐに返信があった。東京都内にあった自身の書斎の建物が、大原町内の友人宅に移されたことも教えてくれた。市原さんは「面識のない人間に返事をくれるなんて。マス目に合わせて一字ずつ丁寧に書いてあり、きちょうめんな性格がうかがえた」と振り返る。

 市原さんは井伏の生誕百二十年に合わせ、これまでの研究結果を改めて編集。井伏が滞在した旅館や漁港の写真なども集め、今年六月、冊子を完成させた。

 冊子は非売品だが、国会図書館や県立図書館、八街市や千葉市などの市立図書館に寄贈した。特に地元の若者たちに手に取ってほしいと願う。「房総を歩いた井伏、そして文学に興味を持つきっかけになったら」と期待している。

 

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