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争点の現場から (3)「九条俳句」問題 市民主役の公民館に

「行政には、市民と一緒に公民館を運営してほしい」と語る武内さん=さいたま市大宮区で

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◆掲載拒否を考える集会呼び掛け 武内 暁さとるさん(66)

 「梅雨空に『九条守れ』の女性デモ」。昨年七月、さいたま市の女性が詠んだ句を同市の三橋(みはし)公民館が月報への掲載を拒否した問題が本紙などで報道された後、掲載拒否の問題点を考える市民集会を知人らと開き、公民館を管轄する市教育委員会に掲載を求めてきた。

 秋田県出身。十八歳で旧与野市(現さいたま市)に転居してから、公民館はずっと身近な存在だった。地元のソフトボールチームや秋田県人会の会合で定期的に利用し、約四十年前には旧与野市内の公民館に友人を招き、手作りの結婚式を挙げたことも。今回の掲載拒否を知り「まさか公民館がこれほど硬直した組織だったとは」と驚いた。

 公民館は、かつて国が国民を戦争に駆り立てたことへの反省から、戦後の民主化政策の中で社会教育の拠点として誕生した。

 掲載拒否を見過ごせなかったのは、武内さん自身も教育に携わってきたからだ。出版業界で長年働いた経験を生かし、約二十年前から東京都内の職業訓練校で非常勤講師を務める。市教委は掲載拒否の理由を「世論を二分するようなテーマの作品は公民館の月報にふさわしくない」と説明したが、武内さんは「市教委の対応は、人の可能性や能力を引き出す『教育』ではない。一方的な押しつけだ」と指摘する。

 さらに納得できないのは、市教委が批判や抗議に真剣に耳を傾けないことだという。有識者らでつくる市の「公民館運営審議会」(委員長・安藤聡彦(としひこ)埼玉大教授)のメンバーからは「どんな作品でも掲載するべきだ」との声が相次ぎ、同審議会は今年一月、今回の経緯を検証する第三者委員会の設置を市教委に求めることを決めた。しかし、稲葉康久・市教育長は、掲載拒否の賛否が分かれる中で委員の人選が困難になる、との理由で即座に難色を示した。

 武内さんたちは今月、第三者委の設置などを市教委で議論するよう請願書を出した。しかし、市教委は昨年十一月に掲載拒否問題への対応を同教育長に一任することを決めており、稲葉教育長はそれを理由に請願を門前払いにした。「非常に官僚的。市民の意見を聞いて一緒にまちづくりを進める地方自治のあり方から離れている」

 県内の統一地方選は間もなく県議選とさいたま市議選を皮切りに始まる。武内さんは「公民館の主役は市民で、政治経済や地域の課題を誰もが自由に考え、表現できる場所だ。そのために何ができるか、さいたま市だけでなくすべての自治体に考えてほしい」と訴える。 (谷岡聖史)

  =おわり

 

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