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統一選 地方は今(下)「諦めムード」どう打開 まちづくり

整備中のガソリンカーの前で鉄道への思い入れを語る町田さん=日光市足尾町で

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 枕木と付け替えたレールの継ぎ目を凝視し、安全を確認すると、作業員らはほっとした表情を浮かべた。近くにはフォード製のガソリンエンジンを積んだ真新しい機関車と客車。NPO法人「足尾歴史館」の有志メンバーらが運行を前に点検に励んでいた。

 かつて旧足尾町(現日光市)の住民の足だった「ガソリンカー」が歴史館で復元されて今年で六年。四〜十一月の第一土、日曜に旧スケートリンクを改造した一周約百七十メートルのコースを疾走する。親子連れや鉄道ファンから人気を集め、今や歴史館の名物だ。

 「ガソリンカーは自分の専門。これなら役に立てると思った」。NPO理事の町田洋さん(71)が整備の手を止めて語り始めた。本業は自動車整備業。商工会の元会長で、さまざまな町おこしにも携わってきたが、自分の知識が生かせる取り組みは初めて。やりがいは人一倍だ。

 足尾銅山で栄えた地元の栄枯盛衰を見つめてきた。銅山は一九七三年に閉山。八八年に製錬所の稼働が停止すると、人口減少と高齢化が急速に進んだ。終戦直後は二万人だった人口も、今や約二千三百人。その半数が六十五歳以上の高齢者だ。過疎化で行き詰まる町の現状をこう表現する。

 「諦めムードが町全体を覆っている」

 今、町田さんが気にするのは、足尾と群馬県桐生市を結ぶ第三セクター鉄道「わたらせ渓谷鉄道」(わ鉄)の行方だ。赤字経営で、十年ほど前から廃線のうわさが絶えない。

 輸送人員は九四年度の百六万人をピークに減少が続き、二〇一三年度は四十万人を割り込んだ。歴史館の横を走る古びた車両が、乗客であふれる日は少ない。

 もともとNPOは、銅山跡の世界遺産登録を目指して設立された経緯がある。それだけに、足尾の発展を支えた旧国鉄足尾線である「わ鉄」の維持に向けた沿線振興は、欠かせない取り組みとなっていた。ガソリンカーの復元もその一環。同じ鉄路を走るわ鉄への思い入れは、町田さんの中でも日増しに高まる。

 「わ鉄に限らず、三セク鉄道がどこも経営が苦しいのは百も承知。でも、廃線になれば高齢者は移動手段を失う。安全性や定時運行を考えれば鉄道が一番」。吐き出すように言葉を続けると、再び整備中のガソリンカーに向かって手を動かし始めた。

 NPOによると、ガソリンカーが走っていたのは、一九五五年までの約三十年間。銅山が無料で運行し、多くの町民に愛された公共交通だった。県内では今、宇都宮市で次世代型路面電車(LRT)の導入計画が進むなど、公共交通と合わせたまちづくりの議論が進む。

 「環境にも優しい鉄道が、簡単に廃止されていいはずがない。足尾銅山が独自に作り上げたガソリンカーの文化とともに、鉄道文化も守っていきたい」

 地域の個性と鉄道の良さを見直す世論の広がりに、町田さんはかすかな期待を抱く。 

  (藤原哲也)

 <第3セクター鉄道> 国や地方公共団体の第1セクターと、民間企業の第2セクターの共同出資で運行。旧国鉄の分割民営化を機に、地方で多くの3セク鉄道が誕生した。県内には、わ鉄以外に、茂木町と茨城県筑西市を結ぶ真岡鉄道、日光市と福島県南会津町を結ぶ野岩(やがん)鉄道がある。3社とも赤字経営で、沿線自治体が穴埋めしているのが現状。県は3社に枕木交換など安全対策事業名目で毎年約6000万円の補助金を出し、出資する真岡、野岩両鉄道には経営安定化を名目に約6000万円をさらに支出する。

 

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