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これからの「政治」の話をしよう(4) 市民のため下働き

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◆社会学者・上野千鶴子さん

 社会学者の上野千鶴子さん(66)といえば女性学のパイオニアだが、こと政治に関しては「議員の性別にはこだわらない」と言い切る。

 どういうことだろう。「ただ女性議員が増えればいい、という時代は終わった。政党の駒ではなく、自分ひとりの責任で判断する議員が必要。そのために立候補者が誰のために働くのかを見極めないといけない」

 必要なのは、組織のためではなく市民の下働きとして汗を流す市民派議員だというのだ。

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 統一地方選に向け、昨年十月に「市民派議員になるための本」(寺町みどりさん、寺町知正さん共著)を新たにプロデュースした。その序文で「地方議員をパートタイム議員に」と提唱している。パートタイム議員とは、生業(なりわい)は別に維持したまま、市民のために働く議員。職業政治家の特権をなくし、政治を有償ボランティアと捉え直すべきだという。パートでいいなら議員になるハードルはぐっと下がる。

 「若い人が職を辞して議員になるのはコストが大きすぎる。アフターファイブに委員会方式で話し合って、それを年数回の全体会で決定していくようにすればいい」

 審議会のメンバーも、テーマごとに当事者を公募すればいいと提案。子育ての議論には若い母親も加えるなど、暮らしの現場にいる人々でつくる議会をイメージする。「ITを活用し、障害者にはスカイプ(インターネット電話)や車いすで参加してもらう」とも。確かにパート議員ならマイノリティーも加わりやすい。

 とっぴなアイデアにみえるが、それが本来の「自治」という。

 「市民が自分たちで物事を決めていく自治の必要性は、東日本大震災以降、一層、高まっている」と指摘する。脱原発を望む国民は多いのに、国と電力会社は原発再稼働を推し進め、地元議会が追認していく。「このずれは声を上げれば変えられる」

 具体例として挙げたのが、東京の母親たちの「保育所一揆」だ。昨年二月、認可保育所の選考から漏れた母親たちが集団で杉並区に異議を申し立てた。進まない保育所対策に業を煮やした母親たちの共感を呼び、各地で異議申し立てが続出。自治体も認可保育所の増設に本腰を入れざるを得なくなっている。

 上野さんは、地方選こそ市民の声を生かす機会と強調し、自信に満ちた表情で話した。

 「私たちの一番の敵は無力感。小さな目標を設定して変化を実感する『やったぜ感』を味わうといい」 (高島碧)

 うえの・ちづこ 東大名誉教授。NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長。「近代家族の成立と終焉(しゅうえん)」など著書多数。富山県上市町生まれ。

 

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