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【社説】

郵政社長人事 『国民不在』では困る

2009年6月4日

 鳩山総務相は何としてでも日本郵政の西川善文社長を辞めさせたいらしい。西川氏は郵政の相次ぐ不祥事をよそに続投を表明した。国民には利便性向上など民営化の理念そっちのけの泥仕合に映る。

 鳩山邦夫総務相は「政治家の言葉は重い。信念を曲げることはしない」と語った。今月末で任期が切れる西川社長の続投が決まった場合、辞任も辞さないという。

 鳩山氏の辞任要求は一度や二度ではない。「株主総会で再任されても、総務相の認可がなければ効力を発しない」などと西川氏を牽制(けんせい)し続けている。

 保養宿泊施設、かんぽの宿の売却手続きに疑義がある。鳩山氏が辞任を求める主たる理由だ。

 二千四百億円を投じた全国七十九カ所のかんぽの宿の関連施設は、いったんはオリックス不動産への譲渡が決まった。価格は百九億円。鳩山氏は安すぎると批判し、オリックスへの譲渡にも「出来レース」と疑いの目を向けた。

 鳩山氏の辞任要求を理解できないわけではないが、部下の総務官僚に指示して日本郵政に大量の関連資料を出させ、売却の経緯を念入りに調べても明らかな不正行為は出てきていない。日本郵政の社外取締役らで構成する指名委員会は、準備会社時代から経営のかじ取りを行ってきた西川氏の実績を評価し、続投を支持した。

 それでも鳩山氏が西川氏辞任を言い続けるのは、波乱含みの政局の中、政治家として存在感の誇示を狙っているようにも見える。

 「民営化は、なお道半ばだ」。そう語り、続投表明した西川氏とて胸を張れる状況にはない。不祥事が絶えず、障害者向け割引制度を悪用した不正メール事件では日本郵便の支店長らが逮捕された。肝心の業績も二〇〇九年三月期の純利益が計画を二割下回った。

 民営化前の郵政公社時代からの問題が尾を引いているとはいえ、一般の民間企業なら辞任してもおかしくない。

 どう反省し、立て直していくかをあいまいにしたまま続投というのでは国民の理解は得られまい。

 かんぽの宿をめぐる「鳩山−西川」対立の構図の背景には、民間に渡ってしまった郵政の権益を取り戻そうとする官僚の思惑なども絡むとされる。

 「経営の自由度を拡大し、利便性を向上させる」。政府が民営化前に閣議決定した基本方針だ。その目的が忘れられていないか。争いの次元は日本郵政の実質株主である国民の思いと遊離している。

 

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