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【社説】

NHK会長 権力との距離を保って

 NHKの会長が籾井勝人氏から上田良一氏へとバトンタッチされた。籾井氏の問題発言や職員の不祥事からどう立ち直るか。何よりも報道機関として、権力との距離感をどう保てるか試されよう。

 籾井氏の場合は就任早々の記者会見から厳しい批判を浴び続けた。「政府が右というものを左というわけにはいかない」などと発言したからだ。NHKは視聴者の受信料と税金、そして信頼で成り立っている。民主主義国家の公共放送である。

 それなのに「政府が右なら右」という発想自体が、専制主義国家の国営放送と変わらない。権力者の言い分をそのまま視聴者に押しつけるだけだ。それならばNHKの存在意義はないと言っていい。

 英国の公共放送であるBBCは、権力に対しても厳しい姿勢であることはよく知られている。だから、NHKのトップも政治ときちんと距離を置いて、ジャーナリズムを理解する人材でなければならないはずである。

 上田氏はどうであろうか。経営委員十二人のうち唯一の常勤であったうえ監査委員も務め、NHKの内部事情にも精通していた。もちろん三菱商事で副社長をつとめた経営手腕も期待されていよう。

 だが、上田氏もジャーナリズムの世界とは無縁の人である。三菱商事でも財務畑を歩んだ。果たして公共放送のトップとしてふさわしい資質を持っているのか。現政権と距離を保てるのか、その就任後から厳しいメディアや世論のチェックを受けることになろう。

 何よりも放送法が「放送による表現の自由」を保障していることを肝に銘じてもらいたい。同法四条に定められた、政治的公平性が問題視されることがあるが、これは立場によっていかなる解釈もとることができる極めて抽象的な概念である。

 放送法の定めは、放送事業者が自らの放送倫理や良心に基づいて、自律的に守るべき倫理規定であるというのが一般的な解釈である。戦前・戦中は「放送の自由」がなかった。

 それどころか、政府や軍部の宣伝機関に利用された歴史がある。だから、その反省に立って、「放送による表現の自由」を目的に据えたのである。

 権力は今、メディアに対して厳しい姿勢を見せる。放送局への行政指導もたび重なる。新会長は公共と自律という二つの言葉で、一万人にものぼる巨大組織を牽引(けんいん)してほしい。

 

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