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【社説】

韓国・朴大統領を罷免 民主政治を立て直す時

 韓国憲法裁判所が朴槿恵大統領の弾劾訴追を妥当と判断し、大統領の罷免が決まった。腐敗を根絶し、多様な民意を反映する政治を実現するよう望む。

 朴氏は国会で弾劾され約三カ月間、職務停止中だったが、大統領が罷免されるのは韓国の憲政史上初めて。五月に次期大統領選が実施される見通しだが、政治の混乱は当分続きそうだ。

 憲法裁が重視したのは、朴氏の長年の友人である崔順実被告の国政介入事件だった。朴氏が崔被告の私益のために、大統領の地位と権限を乱用したのは違憲、違法行為に当たると認定し、裁判官八人が全員一致で罷免が妥当との決定を下した。

◆密室協議と政経癒着

 憲法裁の決定によると、崔被告が取り仕切った二つのスポーツ、文化財団の資金集めと運営に朴氏が協力し、企業の財産権と経営の自由を侵害した。

 また朴氏は機密を含む大統領文書を崔被告に流出させ、国家公務員法の守秘義務違反に当たると判断した。崔被告に人事や閣議の資料、米国務長官との面会資料なども伝達していたという。

 民主化実現から約三十年。大統領府には古い強権体質が残る一方で、世論は不正を厳しく追及するという、韓国の民主政治の現実がはっきり現れた。

 韓国の大統領は「帝王」と呼ばれるほど強い権力を持つ。分断国家でイデオロギーが異なる北朝鮮と対峙(たいじ)し、統帥権を持つからだ。朴氏は秘書官や閣僚とも個別にはほとんど会わず、記者会見も数えるほどで、意思疎通を欠く「不通」と批判されていた。

 重要案件を特定の友人や側近だけと相談する密室協議を続けたのは、時代の変化を完全に見誤ったというしかない。憲法裁は「大統領の公務は透明性を保って公開し、評価を受けなければならない」と指摘した。

 政党は保守から革新まで広がり、経済や福祉、環境など非政府組織(NGO)の活動も盛んだ。朴政権の誤りを教訓に、多様な価値観を反映する政治を進めるべきだろう。

 一連の疑惑では政権と財閥企業の癒着が浮上した。歴代政権でも見られた、韓国の根深い病理だ。

 韓国最大の財閥サムスングループによる贈収賄事件が立件され、検察は罷免され不訴追特権を失った朴槿恵氏に対しても、捜査を本格的に進める見通しだ。

 財閥は政府に規制緩和や税務調査を甘くするよう働きかけ、見返りに贈賄や国会議員への不正な政治資金提供をして、摘発される事例は後を絶たない。

 財閥企業に依存する経済構造を徐々に改め、中小企業の育成と若い世代の起業を支援する政策が必要だ。雇用問題や社会格差の解決が、民主化を前進させる。

◆法治主義の徹底こそ

 昨年十月末からソウルなど全国主要都市で、大統領退陣を求める大規模デモ、集会が続いた。市民の熱気が世論をリードして国会による弾劾を促し、ついには憲法裁の罷免決定にも影響を与えたというのが、韓国内の見方だ。

 一九八七年、デモという大衆行動で全斗煥・軍事政権に終止符を打ち、民主化を勝ち取った成功体験は語り継がれていたようだ。

 だが、憲法裁の決定直後から罷免反対派が抗議デモをし、規制に当たった警察と衝突して死傷者が出ている。

 民主政治を支える大きな柱は、法治主義である。憲法裁の判断が示された以上、内容に不満があっても反対派は結果を受け入れるべきだ。

 憲法裁判断は五つの争点のうち二点について違憲、違法と認めて大統領の罷免を決めた。最大の焦点だった財閥企業との贈収賄については判断を避け、審理が規定の最長期間の半分で裁決を下したことも含めて、憲法裁の在り方が問われるだろう。

 一方、検察は野党や政府批判勢力の不正を暴こうとする「政権の手足」の役割を担ってきたが、最後は朴政権に反旗を翻した。

 世論や政治の流れを過度に意識することなく、厳正に法を適用する−。法治主義を徹底する努力を、韓国司法に望みたい。

◆外交と安保には不安

 朴氏罷免への反発は続くとみられ、次期大統領選に入れば、保守と革新に国内が二分されるという危機感が広がっている。

 北朝鮮は核実験、ミサイル発射を繰り返す。韓国は中国と高高度防衛ミサイル(THAAD)配備をめぐって緊張が高まり、日本とは元慰安婦問題で溝が深い。

 韓国は矛盾が明らかになった民主政治を立て直すとともに、外交の対立を最小に抑えて、朝鮮半島の安全に総力を上げる姿勢が必要だ。次期政権は朴政権が抱えた重い課題を引き継ぐことになる。

 

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