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【社説】

残業の上限規制 「欧州並み」目標どこへ

 長時間労働の抑制に向けて第一歩になりそうだが、ワークライフバランスを実現するには程遠い。残業の上限規制について政労使が大筋合意した。政府目標の「欧州並み」はどうなったのか。

 事実上“青天井”になっている残業時間に、初めて法的な強制力がある歯止めがかけられることになる。安倍晋三首相は「歴史的な大改革だ」と胸をはった。

 月四十五時間を超える残業時間の特例は年六カ月までとし、年間七百二十時間の枠内で「一カ月百時間未満」「二〜六カ月平均八十時間」の上限を、罰則付きで法定化する方針だ。

 連合の要求で当初案の「一カ月最大百時間」よりは若干修正された。しかし、労災認定基準のいわゆる過労死ラインに相当する働き方を、国が容認するものであることに変わりはない。

 そもそも政府の働き方改革は、家庭生活と仕事の両立(ワークライフバランス)を容易にすることが出発点だったはずだ。労働時間についても「欧州並み」の少なさを目指すという目標を掲げていた。ならば過労死根絶は当然のことながら、さらに進んだ対策が求められよう。

 現行は残業規制の対象外となっている建設業や運輸業、企業の研究開発部門などの扱いも決まっていない。抜け穴はなくすべきだ。

 また、管理職も規制から外れているほか、働いた時間とは関係なく一定時間働いたものとみなす裁量労働制や事業場外みなし制の労働者も事実上、対象外となる。十分な権限がない「名ばかり管理職」や、無理やり裁量労働制を適用するケースが増える懸念もある。管理職の要件を明確にするとともに、行政の監督・指導を強化することは実効性を担保する上で不可欠である。

 仕事が終わり、次に働くまでに一定の休息時間を取る「インターバル制度」も企業への努力義務を課すにとどまった。この規制があれば「ほとんどの過労死は防げる」と多くの専門家は指摘する。罰則付きの義務化を検討するべきだ。

 長時間労働の抑制は、育児時間がとれないことによる少子化、介護を理由とする離職、一人で子育てを担うため非正規雇用が多くなるひとり親家庭の貧困など、あらゆる社会問題の解決にもつながる。

 見直し規定も盛り込まれたが、導入から「五年後以降」といわずより速やかに、残業の上限を下げることを検討するべきだろう。

 

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