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【社説】

春闘の役割 世論のうねり逃さずに

 四年連続のベースアップは一定の成果だが、今春闘のもう一つの焦点は働き方改革だ。働く人たちを軽視して格差を広げれば、人は心身を痛め、社会は発展を妨げられる。世論はもう気付いている。

 デフレ脱却、異次元金融緩和、官製春闘…昨年まで三年続いた春闘のキーワードはこの春、すっかり姿を消した。最大の理由はトランプ大統領の出現だろう。

 政権発足から約二カ月。揺さぶり発言が多く、具体像は見えない部分が多いが、米国が経済で本格的な保護主義に転じれば、自動車産業を柱にしたものづくりと通商の国である日本は大きな打撃を受け、賃上げどころか混乱に陥りかねない。

 今後の展開が見えない不安と不透明感の中、賃金交渉では相場のリード役である自動車でトヨタや日産が前年を下回るものの四年連続のベアを回答した。二年連続の前年割れ回答では消費の底上げ、デフレ脱却は期待できないが、暮らしを支える着実な賃上げは何とか守ったといえる。

 今春闘の焦点は、集中回答日前の十三日に政労使のトップ会談で決着した「残業時間の上限規制」が示す働き方改革にある。

 「勤勉」「協調性」「集団主義」といった日本的な労働観が背景にある長時間労働は、労使がともに黙認してきた。

 春闘の最中に明らかになったクロネコヤマトの宅配便問題は、過剰なサービスと労働、何度も再配達させたあげく礼も言わないような風潮、それを許している働く人に対する軽視や鈍感を浮き彫りにもした。

 クロネコヤマトに限らず地道に働く多くの人たちへの過小評価は賃金を抑え込み、経済格差の拡大につながっている。

 米欧ではこれが中間層を没落させ、極端な主張の政治家、自国第一主義や保護主義の土壌となり、分断社会の芽を生んでいる。

 働き方改革を今春闘の焦点に押し上げたのは、後を絶たない過労死の悲劇、働く人の尊厳を軽んじてはいけないという当たり前の国民的な世論のうねり、広がりといえる。

 多くの労働組合、そしてリーダーである連合は、働く人たちを守り尊重し、正当に評価する施策を経営者や政府に要求し、着実に働き方を変え賃金を上げていく責任を負っている。ポピュリスト政治家ではなく、連合が働く人たちの不安や怒りや苦しみ、そして夢の受け皿にならなくてはいけない。

 

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