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【社説】

ふるさと納税 自治体の危機が問題だ

 豪華な返礼品が問題視されていた「ふるさと納税」で政府がようやく是正に動いた。返礼品は寄付額の三割以下との基準を示したが、本来の趣旨を大きく逸脱した制度は抜本的に見直すべきだ。

 「生まれ育った地元に恩返しできる制度に」−ふるさと納税の原点である。それが、寄付の見返りの特産品を目当てにした官製「お取り寄せ通販」になってしまったきらいがある。

 全国の自治体は一万円の寄付当たり平均四千円の返礼品を送っていた。返礼品が高価な自治体ほど寄付額が多い傾向がある。それがまた返礼品競争を過熱させた。国の見直しは不十分で、今なお多くの問題を抱えている。

 一つは、そもそもの原点である寄付という行為をゆがめてしまったことだ。「ふるさと納税」をたとえていえば、こういうことだ。

 「混雑した電車で座っていたら目の前に二人のお年寄りが来た。席を譲ってくれれば、片方は百円支払うといい、もう片方は二百円出すという。だったら高い方に席を譲ることにしよう」

 関東のある市長が広報紙のコラムに書いた話である。席を譲るのは何か褒美や対価をもらおうと思ってではなく善意からだろう。寄付という本来は無償の善意をほごにしてしまったのだ。

 いわんや納税意識をもゆがめてしまった。本来、住民税はごみ収集など行政サービスを受けるための対価である。ふるさと納税の利用者は、この負担を免れたうえにサービスだけは享受し、さらに返礼品を受け取っている。

 あおりを食った東京二十三区では、特別区民税の合計の税収減が約百三十億円に上り、百人規模の保育所約百カ所分の年間運営費に相当するほどだと試算した。

 税の原則はそれぞれが担税能力に応じて負担し合う。それがないがしろにされ、また「見返りがなければ納税しない」といった誤った考えも助長しかねない。

 富裕層ほど減税額が拡大し、有利な節税手段として利用されているのも許せない。

 ふるさと納税は東日本大震災や熊本地震などの被災自治体を支援する役割を果たした。特産品の認知度を上げようとする自治体の真摯(しんし)な努力も評価したい。

 だが税の原則をゆがめている制度の根幹はやはり見直すべきだ。何より大事なのは地方の自治体が無理に寄付集めに走らなくてもすむよう国が危機を理解し、まっとうな支援を講じることだろう。

 

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