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【社説】

米のシリア攻撃 武力に頼りすぎるな

 この性急ぶりには危うさを覚える。化学兵器を使用したとみられるシリアのアサド政権へ米国がミサイル攻撃に踏み切った。力に頼りすぎぬよう、トランプ大統領には自制と協議を求めたい。

 化学兵器使用を知ったトランプ氏が「一線を越えた」とシリアを非難していただけに、武力行使は想定内ではあった。

 それでも即座に実行に移したのには、「即断できる強いリーダー像」を自身につくりあげたい思惑がちらつく。シリアへの武力行使をためらった弱腰のオバマ前大統領とは違うのだ−と。

 トランプ氏は二度にわたって出したイスラム教徒入国禁止令を司法に阻まれ、目玉公約の医療保険制度改革(オバマケア)廃止でも深い挫折を味わった。支持率は低迷し、政権運営は壁にぶつかっている。

 洋の東西を問わず戦争を政権浮揚につなげるのは常とう手段だ。

 加えて、習近平・中国国家主席を自身の別荘に迎えたさなかにミサイル攻撃を行ったタイミングは、偶然とは思えない。

 北朝鮮の核・ミサイル開発に危機感を抱く米国では、先制攻撃論が台頭し、トランプ氏はじめ政権首脳陣も「あらゆる選択肢を検討中」と口をそろえる。

 シリアへのミサイル攻撃は、それがはったりではないと習氏に思い知らせる効果がある。

 戦火を見るのがいやなら、北朝鮮に核・ミサイル開発を放棄させるために協力しろ、という圧力だ。米国は常々、中国の北朝鮮対応にいら立ちを見せてきた。

 トランプ氏はミサイル攻撃に関する声明で「化学兵器の拡散と使用を阻止することは、米国の安全保障上の死活的利益だ」と強調した。米国の安全を脅かす者には容赦しない、という北朝鮮にも向けたメッセージでもあろう。

 だが、武力行使は平和的努力を尽くした末の最後の手段であるべきだ。トランプ氏は強圧的な姿勢が目立つ。国際問題への対処では安易に武力に走らないようくぎを刺しておきたい。

 トランプ政権の中東外交の青写真はできていない。シリア内戦でも、アサド政権打倒よりも過激派組織「イスラム国」(IS)掃討を優先させる姿勢を見せたばかりだった。軍事介入した以上は関与する責任も大きくなった。

 内戦終息の道筋をつけるには、アサド政権の後ろ盾のロシアの協力が欠かせない。米ロは建設的な話し合いを進めてほしい。

 

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