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【社説】

首相夫人の立場 「私人」には無理がある

 首相夫人は「公人」か「私人」か。安倍内閣は、学校法人「森友学園」への国有地売却問題をめぐる首相夫人への追及をかわすため「私人」との立場を貫きたいのだろうが、やはり無理がある。

 「『首相夫人』は、公人ではなく私人であると認識している」。政府が閣議決定した、国会議員の質問主意書への答弁書の内容だ。

 首相夫人が「公人」か「私人」か。これまではさほど議論になることはなかったが一転、注目されるようになったのは国有地売却問題をめぐり、安倍晋三首相の昭恵夫人が新設予定の小学校の名誉校長になったり、夫人付きの政府職員が財務省に問い合わせた内容を、学園の籠池泰典理事長(当時)に文書で回答していたことがきっかけだ。

 首相夫人の役割は、特に外交では重要だ。先進国首脳会議(サミット)などの国際会議では首脳日程とは別に、配偶者だけのプログラムが組まれることも多い。

 公務員としての発令はないものの首相夫人が「公的な存在」であることは否定のしようがない。

 だからこそ、二〇〇六年の第一次安倍内閣発足後、首相夫人を支援する職員が配置されるようになったのだろう。現在は常勤、非常勤を合わせて五人に増員された。

 しかし、昭恵夫人の場合、公私の境目が曖昧だったようだ。

 籠池氏に回答した夫人付きの職員は、昭恵夫人が学園系列の幼稚園で講演した際や一六年夏の参院選候補者応援、同年八月の米ハワイ州訪問のほか、スキーイベントにも三年連続で同行していた。

 これらは夫人の私的活動とされる。だとしたら、安倍内閣は「私人」の「私的活動」にも公務員を派遣していたことになる。

 いくら「連絡調整」のためだとはいえ、すべての公務員に「全体の奉仕者」であることを求める憲法の則を超えていないか。

 安倍内閣が、籠池氏への回答を「職務として行ったものではない」とするのも、夫人の関係者の求めに応じて省庁に問い合わせることが公務員として適切でなく、後ろめたさを感じているからだろう。

 昭恵氏が「一強」とされる安倍首相の夫人という「公的な存在」だからこそ、籠池氏側が小学校新設に向けた国有地売却などへの影響力を期待し、職員側もそれに応えようとしたのではないか。

 首相夫人を「私人」と矮小(わいしょう)化して、沈静化しようとしても、追及の手を緩めるわけにはいかない。

 

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