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【社説】

フィギュア引退 真央さん、ありがとう

 まず、ありがとうと言おう。フィギュアスケートの浅田真央選手(26)が引退する。五輪の金メダルには届かなかったが、その姿は私たちの心に記憶され続けるだろう。これからも輝いてほしい。

 世界のトップレベルにまで上り詰めた選手にとって、競技からの引退を決意することは想像を絶する逡巡(しゅんじゅん)の連続だったに違いない。浅田選手には、心からお疲れさまと言いたい。

 高難度のトリプルアクセル(三回転半ジャンプ)を世界の舞台で跳ぶ超一流アスリートでありながら愛くるしい笑顔を絶やさず、ファンはどれほど感動したことか。フィギュアスケート界を牽引(けんいん)した功績は計り知れない。

 伊藤みどりさんら多くの名選手を生み出した“フィギュア王国”名古屋で五歳からスケートを始め、五輪の金メダルを夢見てリンクに立ち続けた。その夢は二〇一〇年バンクーバー五輪で金妍児(キムヨナ)選手(韓国)の壁に阻まれて銀。一四年ソチ五輪では完ぺきな演技をフリーで見せたが、ショートプログラムでのミスを取り返すには至らず六位に終わってしまう。

 「自らの集大成」とソチ五輪に臨んだ浅田選手にしてみれば、悔いを残したまま競技人生から身を引きたくない。その思いが約一年間の休養期間を経ての復帰につながったのだろう。しかし昨年十二月の全日本選手権は十二位に沈むなど、残り火が再び大きく輝くことはなかった。

 フィギュアスケートは最も過酷なスポーツの一つだ。氷上で毎日のように六〜八時間の練習を続け、ジャンプの着地時は体重の五〜八倍の重量が足にかかるため、けがも多い。かつてのように肉体、精神を極限まで追い込むだけの燃え上がる気持ちがなければ、応援してくれる人たちの思いも裏切ることになる。それほどの気力を保てないと感じたことが、引退への引き金となった。

 ただ今回の決断を「人生の中の一つの通過点」と言うように、「浅田真央」としての人生には新たな地平が広がっている。来年の平昌五輪を経て三年後には東京五輪も控え、指導者、解説者、キャスターなど選択肢は多いだろう。

 今や世界の一流アスリートは引退後も各国を飛び回り、国同士をつなぐ懸け橋となることは珍しくない。第二の人生も華やかに舞い続けてほしい。消えることのないその笑顔が、ファンや関係者への最大の恩返しとなる。

 

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