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【社説】

受動喫煙防止 人の命は脅かせない

 たばこを吸わないのに他人のたばこの煙で健康を害する受動喫煙の対策は急務である。厚生労働省が対策強化の法案を公表したが自民党の抵抗に遭っている。国民の健康をどう考えているのか。

 「たばこを吸う人は野蛮人だ」−。自分や周囲の人の健康を害して顧みないことに憤っていたのは、童謡「ちいさい秋みつけた」などを作曲し嫌煙運動でも知られた故・中田喜直さんだ。

 きっかけは同じく著名な作曲家だった父親が、晩年結核に倒れてもたばこをやめず、母親がその姿に苦しめられたからだという。三十年以上も前に聞いた思い出話だが、喫煙をめぐる意識は当時と根本的に変わっていないのではないか。

 厚労省によると、受動喫煙がなければ亡くならずにすんだ人は、乳幼児を含め少なくとも年間一万五千人と推計される。交通事故による死者が同四千人を切るまで減少しているのと比較すれば、その重大性は明らかである。

 たばこを吸わない人は増加し、今では国民の八割を超えた。だが、受動喫煙の被害は依然として深刻なままだ。飲食店で四割、職場では三割を超える非喫煙者が受動喫煙に遭っているという。

 ぜんそく患者やがん患者、妊婦や子供ら受動喫煙から守られるべき弱者を「煙」から遮断するには対策の厳格化が欠かせない。二〇〇三年に受動喫煙防止を健康増進法の「努力義務」としたが、それでは限界があるということだ。世界保健機関(WHO)は日本を「世界最低レベル」に分類した。

 今回、厚労省は小規模なバーやスナックなどを除いて飲食店を禁煙(喫煙専用室の設置は認める)とし、官公庁や学校はより厳しい禁煙措置との案を公表した。それでも国際的には緩い方である。

 自民党内には「飲食店が廃業に追い込まれかねない」「喫煙の自由が侵される」などと反対論があるがおかしい。自主的に全面禁止とした店のほとんどで売り上げが増加または不変という調査結果が愛知県や大阪府で出ている。WHOのまとめでも世界のレストラン、バーで同様の結果だという。

 喫煙の自由は公共の福祉に反しないかぎり尊重されるべき権利である。是か非かという単一議論ではなく、他の人の命を脅かす危険を自覚してほしいということだ。

 訪日外国人の誘致に力を入れ、五輪開催を控える中で、現状の対策では資格なしと言われかねないのが世界の潮流である。

 

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